テレワークの押印問題には電子署名導入検討を

新型コロナウィルスの流行によりテレワークという働き方が急激に加速しました。それまでは社員がみな会社に出勤し、同じ場所で同じ時間働くという働き方が主流でしたが、出社する人員は最低限に抑えるという施策を打ち出した企業も多くあります。

この働き方の激変により、多くのメリットを感じている企業もありますが、同時にほぼ全ての企業が感じた日本的な習慣によるデメリットがあります。それが文書の押印に関する悩みです。

個人レベルまで深く根付く日本の印鑑文化

日本では古来より署名が本人であるという証として押印するという文化が深く根付いています。個人レベルでも実印、銀行印、認印と3種類の印鑑を使用するほど、日々の暮らしの中まで浸透しています。会社レベルでは会社実印、銀行印、角印、ゴム印と一般的に4種類の印鑑が使用されます。

そして、個人も、法人も印鑑登録をすることによって同一であるという証明書が役所によって発行されます。これを根拠に契約書等が本人によって署名されたという証明とするのが日本式の署名方法です。海外では署名だけで済ますところが、印鑑を使用することによってより強固に偽装を防ぐという役割が有るのです。

印鑑のせいで長距離出社する社員も

今までは習慣として請求書や契約書に押していた印鑑ですが、いざテレワークを導入してみると、この印鑑が手元にないために仕事にならないという事態が日本全国で発生しました。なかには判子をつくためだけに長距離出社するというテレワークの意味を根本から考えさせられる事態まで発生しています。

それでは、このテレワークという社会の流れの中で、印鑑の扱いについてどのように企業は考えればよいのでしょうか。現行の法律でどのような規定がされているのか、また、今後どのように印鑑は扱われるべきなのでしょうか。

内閣府や法務省らが「押印について」発表

テレワークが広まりを見せる中、2020年6月に内閣府・法務省・経済産業省が連名で「押印についてのQ&A」を公表しました。それは押印に関する民事訴訟法上の取扱いや効果、電子署名サービスの利用などについて整理したもでした。

2020年4月には経済財政諮問会議において、テレワークを推進していく中で押印における問題をどのように解決するかという議論がされていました。その中で、新型コロナウイルス感染症拡大対策として、テレワーク推進に向けて、押印や書面提出、対面での対応といった制度慣行の見直しが議題に上りました。

翌日には規制改革推進会議の本会議が開かれ、一部書面で押印を法令で求めているものもあり、必要性をしっかりと検証した上で、不要であれば廃止すべきとされました。書類の中には事業者規制法などで、押印が求められるものあるので、そこの課題をどうクリアしていくかという議論です。

また、契約書を交わす際の真正性の担保、日本の商慣習として定着している押印について、『誰が作成したか』を明らかにしておくという点もテーマになっています。

押印が必要なものに対しては、電子認証サービスを利用することをしっかりとはたらきかけていくべきだという意見もあります。電子認証サービス利用の対象としては、契約書、請求書、納品書、領収書などが挙がっています。そのためには、民事訴訟法228条4項の整理が重要ではないか、という旨の意見も多く出ました。

具体的にどんな法律?

民事訴訟法228条の4項には「代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」と記載されています。文書には作成者の意思に基づいて作成されたという証明が求められます。民事訴訟法228条4項は、それが認められる場合について述べています。たとえば〇〇株式会社の印鑑を押してあったら、〇〇株式会社が自社の意思よって文書を作成したことが担保されるというものです。

しかしこれだけでは「実質的証拠力」について記述されている箇所がクリアになりません。文章に記載された内容の「確かさ」は、たとえ押印によって「誰が作成した文書か」がわかっても、「文書の内容が正しいかのか」「事実に基づいているのか」という点までは保証しません。 その文章に判子が押してあるかどうかと、文書の正確性は、直接的に関係していないということです。

民事訴訟法のいう『推定する』という文言は、法務省の資料でも強調していますが、反証可能ということです。そして『押印でなければ成立しない』と書いてあるわけでもありません。法務省の押印QAでは、押印をしても成立の真正を満たすとは限らないとされています。ただ、実印などで、押印した印鑑が、本人のものと確認できるように管理されている場合にかぎり、押印を省略するだけでは不十分となり、電子署名で代替する必要が出てくるのです。

電子署名法成立は2000年にされた

先にも触れた規制改革推進会議でも、「真に必要な場合のみに、一定程度限定すべき」という意見や、「押印が必要な場合も、他の代替手段を認めるべき」という議論が展開されています。 電子署名についても押印と同様に一定の要件を満たせば、使用可能の範囲を広げていくという提案もされていて、不動産、金融、会社法関係について、さらに見直しが期待されます。

現在日本で多く利用されている電子署名のクラウドサービスは2006年以降に広がりを見せています。電子署名法の立法当時の2000年は、まだクラウドという概念もありませんでした。20年前に作られた法律と、現在広く使われているサービスとの間に大きなギャップが生じてしまったことが、今の日本が抱える問題の原因とされています。

しかしコロナ自粛の影響もあってか、2020年9月には河野行政改革担当大臣から閣僚へ”判子の使用を廃止したい。どうしても押印が必要であればその理由を明示せよ。”との通達が出され話題になっています。役所での押印文化が改革されれば必然的に個人レベルまでその改革の波は広がりを見せるはずです。今後日本の押印文化が大きく変わる前触れとも言える出来事です。

今後電子署名を導入しないと機会損失の可能性も

2020年の時点で電子契約の有効性や真正性について具体的に争われた裁判例は存在しないとされています。”されている”というのは、全ての判例が明らかにされていないことによるものですが、メディアによってそういった問題が報じられたこともありません。

以上のような背景から、テレワークを推進している企業の電子署名導入への準備はなるべく早く整えておいたほうがよいでしょう。日本古来からの押印文化ですが、現在のインターネットの発達や、クラウド技術の向上により、新しい認証の技術が日々進化しています。また、役所の世界でも押印文化見直しの号令がかかったところです。

今後ますますIT化が進めば、テレワークに関係なく電子署名文化はスタンダードになると予想されます。デジタル化に遅れを取ると、新規の契約を逃すという機会損失にも繋がりかねません。是非、この機会に電子署名の導入を検討して今後のビジネスの効率化を促進しましょう。

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