今回のテーマは、見える化とはどういったものなのか、を取り上げていきます。テレビやインターネット広告などでで「見える化」という言葉を見かけることがあります。見える化という言葉自体「見えるようにする」ということが伝わりやすく、イメージが沸きやすい言葉のように感じます。
今、この「見える化」がビジネスの世界で爆発的な勢いで広まりを見せているのです。これだけの広がりをみせている要因は、世の中を取り巻く経営のトレンドとマッチしている他なりません。見える化とは何か、どのようなシーンで使われているのか、見える化を導入するとどのような効果が期待できるのかをを見ていきたいと思います。
関係者全員でいち早く状況を共有できる「見える化」
「見える化」という言葉が世に送り出されたきっかけはトヨタ自動車でした。トヨタ自動車では、工場で起こるアクシデントをいち早く多くの従業員で共有する手法を発案しました。
生産ラインのアクシデントをランプで知らせる「アンドン方式」
生産ラインのどこかで不具合が起こると「アンドン」という、その名のとおり行灯のようなランプを点灯させ、アンドンが目視できる範囲の関係者全員が問題が起きていることが一目瞭然になる仕組みを作り上げたのです。
在庫状況を把握できる「カンバン方式」で、在庫過多を解消
また、無駄に在庫を抱えないため在庫の適正化も実施。生産量を最小化するための「カンバン」というツールも開発しました。
「カンバン」方式を実践するまでは、在庫過多による多くのコストを抱えていました。しかしこのツールを使うことによって、生産ライン関係者のみならず発注担当者も目で見てすぐに在庫状況を把握できる形になったため、発注するかどうかの判断できるようになりました。そして過多に在庫を抱えることがなくなったのです。
このような「目で見る管理」は、今まで目で見えなかったものを見えるようにすることによって従業員たちに問題意識を芽生えさせ、迅速に解決に向けて行動する取り組みとして「見える化」と名付けられたのです。その根底には、一体どのような思いがあったのでしょうか。
見える化で問題点を関係者全員で共有できた時点で、生産性の向上が始まる
製造業の現場はとてもシビアな世界です。行程や工数が多いと、1つでも無駄な動きが入るこむだけで莫大なロスへのつながってしまいます。
また、発注を誤るなどして在庫を持ちすぎることは経営をひっ迫させる原因になります。特に生産工程が多く構成する部品数がとてつもない量の自動車となると当然単価も高いので、それが顕著になります。
そのようなシビアな世界で常に改善に取り組む気持ちを持ち、いかに生産性を向上させるかという飽くなき追求の結果生まれたのが「見える化」なのです。
見える化によって問題点が明らかになると、現場で関わる従業員全員で問題が共有できます。これが大変重要で、共有された時点で問題は解決に向かってると言っていいでしょう。
このように「問題意識の共有」によって問題を予防したり迅速に対応する習慣が繰り返されることにより生産性の向上を実現したのが、生産現場の見える化だったのです。
多業種でも「情報の見える化」という観点から注目を集めている
一躍有名になった「見える化」は、生産現場にとどまることなく、様々な業界に浸透していくことになりました。「見える化」という言葉自体も伝わりやすく、理解しやすいことも、職種や業種に関わらず広がっていった要因です。
その中でも、一番良く使われるのが「情報を見える化する」という使われ方ではないでしょうか。本来職場では共有されるべき情報ですが、その情報が何らかの障害によって隠されてしまうことがあります。それを健全に共有できるよう「見える化」しようという取り組みです。
見える化して業務を可視化することによって、業務のプロセスを管理しやすくなる上、その業務に携わる全ての人が、同じレベルで問題意識を共有することができます。それにより問題が起きた時に処理に取り掛かる時間が早くなります。
さらにはチームの一体感も生まれやすくなり、生産性も向上にも繋がりやすくなります。
プロジェクト管理における、見える化とは
近年ではプロジェクトを丸ごと見える化することによって、プロジェクトに関わる全メンバーとあらゆる情報を共有し、リアルタイムで変更などを行いながらプロジェクトを進めていくという方法もとられています。それでは実際にどのような情報や状況を見える化するのでしょうか。
1.タスク管理
日常的なタスクを具体的に洗い出し整理します。作業漏れが起きないように対策を講じることができます。
2.コスト管理
プロジェクトで発生する費用をを明確化して管理します。もし当初の計画コストと実績コストに乖離が発生した場合にはその詳細を確認し、対応する際に活用できます。
3. スケジュール管理
作業の予定や進捗状況、次の工程の準備などを時系列で管理し、納期への
4.品質管理
作業の課題やアクシデントを明示化し、課題を洗い出しながら作業を進めることができます。また、その際どのような対応をしたかを記録することによって今後の対応や業務改善につなげることができます。
5.コミュニケーション管理
現場からの質問、要望、回答などの公開し、関係者全員でその意思を共有することができます。
見える化は、リスク軽減にも効果的
これらを見える化することによって、逐次修正を行いながらプロジェクトを進行できるため、途中でプロジェクトが中止となるといったリスクも管理できます。
これらの管理は今までは現場の担当者の感覚、いわばさじ加減で行われることが一般的でした。しかし、情報を共有せずに担当者任せでは様々な問題が生じる可能性があり、アクシデントが起きた対応も後手後手となってしまうなど、そのリスクを管理することもできません。
見える化によってリスクを軽減することができるのです。
医療現場でも応用されている、見える化
また、ビジネスだけでなく医療現場を見てみましょう。見える化といえば、電子カルテの登場が大きな変化だったかと思います。今では当たり前になった電子カルテですが、それまで先生がペンで記述していたものが、画面を通じて患者と一緒に見ることができるようになりました。
しかし、中規模以上の病院経営となると、現場がどのような働き方をしているのか、院長まで情報が吸い上げられることは難しいとされています。そこで、看護師や職員の業務の見える化を行って、業務改善を行っている病院もあります。
病院のように様々な業務があるとそれぞれにかかる時間を洗い出すのは大変な作業ですが、業務フローによって「見える化」されれば、労働の平準化ができたり、シフト作成の見直しもできます。それにより作業の効率化が図れ、残業も減らせるようになるのです。
見える化を成功させるには「現場を変えたい」という改善への意識が重要
見える化」を生み出したトヨタ自動車の根底にあるのは、「カイゼン」という生産性向上のための改善意識です。見える化ばかりがもてはやされていますが、実はその奥にある現場の「変えたい」という強い意識があってこそ、初めて機能するのが見える化なのです。
情報を共有して一致団結して問題の改善に取り組むチームがあったからこそ、トヨタ自動車の「見える化」が結果として機能したといえます。見える化に取り組む際にはぜひ、組織全体で改善の意識を持って取り組みましょう。見える化は、チーム一体となって取り組めば成果が現れやすい施策と言えます。