ビジネスチャットツールの導入が加速している中、特に「オンプレミス型」を選択する企業が増えています。オンプレミス型のビジネスチャットは、クラウド型に比べて高いセキュリティと柔軟なカスタマイズ性を提供し、特に機密情報の取り扱いや厳格なセキュリティ基準が求められる企業での需要が高まっています。
2024年には、サイバー攻撃の増加や情報漏洩防止に対する意識の高まりから、オンプレミス型の導入がさらに注目されています。特にデータ漏洩防止や内部統制強化の観点から、オンプレミス型はより安全な選択肢として位置づけられています。企業はこれにより、機密性の高いデータや取引情報を安心してチャットツールで共有できるようになります。加えて、オンプレミス型のビジネスチャットは、自社内でのサーバー運用を通じて柔軟なカスタマイズが可能で、業務プロセスに合わせた効率的なコミュニケーションが実現できる点も重要です。
この記事では、オンプレミス型ビジネスチャットの利点と、最新のツールを比較し、最適な選択肢をご紹介します。
オンプレミス型ビジネスチャットとは?
オンプレミス型ビジネスチャットとは、企業が自社内にサーバーを設置し、社内で運用・管理するタイプのチャットツールです。これにより、データの保存や管理がすべて自社内で行われ、外部に依存しない形で運用できるのが特徴です。以下に、オンプレミス型のビジネスチャットについて詳しく説明します。
⒈セキュリティの高さ
オンプレミス型の最大の特徴は、セキュリティの強さです。通常、クラウド型は外部のサーバーを利用するため、その管理やセキュリティは外部のプロバイダーに依存します。しかし、オンプレミス型は自社内のサーバーでデータを管理するため、ハッキングや外部からの不正アクセスのリスクを低減できます。特に、機密情報や個人情報を扱う企業にとって、データが外部に出ることなく完全に社内で管理できる点は非常に大きなメリットです。
例えば、金融業界や医療分野のように、データの安全性が法律や規制で厳しく守られている業界では、オンプレミス型を選ぶことでより高いレベルの安全性を確保できます。
⒉カスタマイズの自由度
次に、カスタマイズの柔軟性もオンプレミス型の大きな特徴です。クラウド型では、あらかじめ決められた範囲の機能を利用する形が一般的で、機能の追加や変更には制限がある場合が多いです。一方で、オンプレミス型では、自社の業務フローに合わせたカスタマイズが可能です。
例えば、特定のプロジェクト管理に特化した機能を追加したり、内部の業務ルールに基づいた通知設定をしたりすることが、オンプレミス型では柔軟にできます。独自のニーズに合わせてツールを進化させられる点が、企業にとって大きなメリットとなります。
⒊コスト面での柔軟性
初期の導入コストがクラウド型に比べて高い点が、オンプレミス型の一つのデメリットとされることもあります。しかし、長期的に見れば、オンプレミス型はコストパフォーマンスが高くなる場合もあります。クラウド型の場合、サブスクリプション料金が毎月発生し、利用者が増えるごとにコストも比例して上がります。一方で、オンプレミス型は一度システムを導入してしまえば、維持コストは管理やメンテナンスにかかるものだけとなり、利用者数が増えてもコストが大幅に増加しないという利点があります。
特に、長期間にわたって安定的に利用することを考えている企業にとって、オンプレミス型は初期費用を回収しやすい選択肢となります。
オンプレミス型ビジネスチャットは、セキュリティ性やカスタマイズの自由度を重視する企業に適した選択肢です。初期費用はかかるものの、長期的なコスト削減や柔軟な運用が可能な点で、特に大規模な企業や高度なセキュリティが求められる業界では人気のある導入形態です。
オンプレミス型のデメリットと課題
オンプレミス型のビジネスチャットには多くの利点がありますが、導入にはいくつかの課題も存在します。ここでは、オンプレミス型のビジネスチャット導入時に考慮すべき主なデメリットと注意点を詳しく解説します。
1. 導入コストが高い
オンプレミス型のビジネスチャットは、自社内にサーバーやネットワーク機器を設置して運用するため、初期投資が高額になる点が大きなデメリットです。具体的には、以下のような設備投資が必要です。
- サーバー機器:自社内でデータを保存・管理するための専用サーバーが必要です。
- ネットワーク機器:安定した通信環境を維持するために、ルーターやスイッチなどのネットワークインフラも整備しなければなりません。
- ソフトウェアライセンスや保守契約:導入後も、定期的なソフトウェアアップデートやセキュリティパッチの適用が必要なため、これらに対するライセンスや保守契約費用が発生します。
クラウド型では、こうした初期コストが大幅に抑えられるため、オンプレミス型は導入のハードルが高いと言われる理由の一つです。
2. メンテナンスの手間
オンプレミス型では、システムの保守やアップデートを自社内で管理する必要があります。クラウド型ではプロバイダーが自動で保守を行うのに対し、オンプレミス型では以下の作業を自社で実施する必要があります。
- 定期的なサーバーのアップデート:セキュリティホールを防ぐために、OSやソフトウェアの更新を定期的に行う必要があります。
- 障害対応:システムがダウンした場合や障害が発生した際には、自社のIT部門が迅速に対応しなければなりません。
- バックアップとデータ復旧:データの定期的なバックアップと、それに伴う復旧手順の準備も求められます。
これにより、特にIT担当者の負担が大きくなり、専任の技術者が必要となる場合が多いです。
3. 導入までに時間がかかる
クラウド型のビジネスチャットは、利用登録を行えばすぐに使い始められますが、オンプレミス型ではシステムの設計や構築に時間がかかることがあります。導入には以下のステップが必要です。
- システム設計:自社の業務ニーズに合わせたシステムの要件定義と設計が必要です。
- インフラの構築:サーバー設置やネットワーク構築、システムのインストールといった物理的な作業が発生します。
- テストと検証:実際にシステムを稼働させる前に、動作確認や問題の洗い出しを行うテスト期間が必要です。
これらの工程を経るため、導入開始までに数ヶ月以上かかることも珍しくありません。クラウド型の迅速な導入と比較すると、オンプレミス型は導入スピードが遅く、緊急対応には不向きな場合があります。
オンプレミス型ビジネスチャットは、セキュリティ性やカスタマイズ性を求める企業にとって優れた選択肢ですが、その一方で、導入コストの高さやメンテナンスの負担、導入までの時間の長さといったデメリットを考慮する必要があります。これらの課題を十分に理解した上で、オンプレミス型が自社に適しているかを慎重に検討することが重要です。
オンプレミス型とクラウド型の違いとどちらを選ぶべきか?
オンプレミス型とクラウド型のビジネスチャットツールは、それぞれ異なる特徴を持っており、どちらが自社に適しているかは、企業のニーズによって異なります。初心者でも分かるように、それぞれの違いと選択する際のポイントを詳しく解説します。
1. セキュリティ重視ならオンプレミス型
オンプレミス型とは、自社のサーバーにビジネスチャットツールをインストールし、データや情報を社内で管理する方法です。これにより、セキュリティを高めることができ、特に機密情報を扱う企業や法的規制が厳しい業界では重要です。例えば、金融機関や医療業界など、顧客データや機密情報を厳重に管理する必要がある企業にとって、データが外部に流出するリスクが少ないオンプレミス型は非常に有効です。
- メリット: データが自社内にあるため、外部のハッキングや情報漏洩のリスクを最小限に抑えられる。
- デメリット: サーバーの設置や管理には高い初期費用や維持費がかかり、専門のITスタッフが必要になる場合があります。
2. コストや導入スピード重視ならクラウド型
クラウド型は、インターネットを介して外部のプロバイダーが提供するサーバー上でチャットツールを利用する方法です。クラウド型は導入が迅速で、初期費用がほとんどかからず、月額料金で利用できるため、低コストでの運用が可能です。サーバーのメンテナンスやアップデートはサービス提供者が行うため、IT部門の負担も少なくなります。
- メリット: すぐに導入ができ、初期費用が安く済む。スケーラビリティも高く、利用者数に応じてリソースを柔軟に拡張できる。
- デメリット: データは外部のサーバーで管理されるため、セキュリティやデータ管理に不安を感じる場合があります。また、プロバイダーのセキュリティ対策に依存します。
3. カスタマイズの柔軟性
オンプレミス型では、自社の業務フローに合わせたカスタマイズが容易です。システムや機能を自由に設定し、自社に最適なツールに仕上げることができます。例えば、特定の業務プロセスに特化した機能を追加したり、セキュリティポリシーに合わせた調整が可能です。
一方で、クラウド型もAPI連携を活用することで、ある程度のカスタマイズは可能です。ただし、プロバイダーが提供する機能に依存するため、オンプレミスほどの柔軟性は期待できない場合があります。
- オンプレミス型のカスタマイズ: 自由度が高く、企業のニーズに合わせた機能追加や設定ができる。
- クラウド型のカスタマイズ: APIを通じて他のツールと連携し、ある程度のカスタマイズが可能だが、機能の拡張は制限されることがある。
どちらを選ぶべきか?
最終的に、セキュリティ重視で機密性の高いデータを扱う企業や、システムのカスタマイズ性を求める企業にはオンプレミス型が適しています。一方で、導入スピードやコスト削減を重視し、迅速に運用を開始したい企業にはクラウド型が最適です。企業のニーズに合わせて、適切な選択を行うことが重要です。
オンプレミス型ビジネスチャットの選び方
オンプレミス型ビジネスチャットを導入する際、適切なツールを選ぶためには、自社のニーズに合った機能やサポート体制を見極めることが重要です。ここでは、ツール選定時に考慮すべきポイントを詳しく解説します。
1. 必要な機能を明確にする
オンプレミス型のビジネスチャットツールを導入する際、まず自社の業務に本当に必要な機能をリストアップすることが大切です。例えば、以下のような質問を自社に向けて考えると良いでしょう。
- どんなチャット機能が必要か?
例えば、グループチャットや個別チャット、ファイル共有、ビデオ通話など、どの機能が社内コミュニケーションに必須かを考えます。 - どのデータをどのように管理するか?
データのセキュリティや保存方法も重要です。オンプレミス型ならデータはすべて自社のサーバーで管理するため、どのようなセキュリティ対策が必要か、またどの部署がそのデータにアクセスするかを考慮します。 - 将来的な拡張が必要か?
企業が成長して従業員数が増える場合、ビジネスチャットの拡張性も重要です。将来の変化に柔軟に対応できるツールを選ぶことで、長期的な運用が楽になります。
不要な機能を省くことで、コストの削減や操作性の向上が期待できます。たとえば、ファイル共有やプロジェクト管理など、多機能すぎるツールは魅力的に見えるかもしれませんが、実際に使わない機能があると、かえって操作が複雑になり、導入コストも高くなってしまいます。
2. サポート体制の確認
オンプレミス型のビジネスチャットでは、導入後のサポート体制も非常に重要なポイントです。オンプレミス型では、自社でシステムを運用・管理するため、技術的な問題が発生した際には迅速に対応するサポートが必要です。以下の点を確認することをおすすめします。
- 技術的なトラブル対応の迅速さ
システムがダウンしたり、トラブルが発生した場合に、迅速に解決できるサポート体制が整っているか確認しましょう。特に24時間対応のサポートや、緊急時にすぐ対応できる体制が整っているかどうかが重要です。 - サポートの内容と範囲
例えば、リモートサポートのみで十分なのか、あるいは必要に応じて現地対応が可能かを確認します。また、サポートが日本語で提供されるかどうかも考慮する必要があります。 - 定期的なアップデートやセキュリティパッチの提供
サーバーのセキュリティを維持するためには、定期的なアップデートやセキュリティパッチの適用が必要です。これをしっかり行ってくれるプロバイダーを選ぶことが重要です。
オンプレミス型のビジネスチャットツールを選ぶ際には、まず自社に必要な機能をしっかりと把握し、不要な機能を避けることでコストと操作性を最適化しましょう。また、導入後のトラブル対応やサポート体制が充実しているかどうかも確認することで、安心してシステムを運用することができます。
おすすめのオンプレミス型やオンプレミス対応のビジネスチャット5選
ビジネスチャットツールを選ぶ際に、セキュリティは非常に重要なポイントです。ここでは、オンプレミス型やオンプレミス対応の5つのおすすめビジネスチャットツールの特徴と、特にセキュリティに関するポイントを詳しく説明します。
1. Tocaro



- 特徴: Tocaroは日本企業向けに設計されたビジネスチャットツールで、シンプルで使いやすいUIに加えて、柔軟なカスタマイズ性を提供しています。オンプレミス型の導入が可能なため、機密情報を多く扱う企業でも安心して利用できる点が大きな特徴です。
- セキュリティ面: Tocaroは、データが外部に流出しないように、社内サーバー上でのデータ管理を可能にしています。これにより、外部のクラウドプロバイダーに依存せず、セキュリティポリシーに沿った運用ができるため、企業の内部統制やセキュリティ基準を満たすことが容易です。
- URL: Tocaroのサービスサイト
2. Rocket.Chat



- 特徴: Rocket.Chatはオープンソースのビジネスチャットツールで、開発者やIT部門の自由度が非常に高く、さまざまなカスタマイズが可能です。オンプレミス型として利用できるため、自社のサーバーにシステムをインストールし、完全に管理下で運用できます。
- セキュリティ面: Rocket.Chatは、TLS(Transport Layer Security)やSSL(Secure Sockets Layer)による暗号化通信をサポートしており、データの安全な送受信を確保します。さらに、ユーザー管理やアクセス制御も柔軟に設定可能で、外部からのアクセス制限やIP制限など、細かいセキュリティ設定が可能です。
- URL: Rocket.Chatのサービスサイト
3. Mattermost



- 特徴: Mattermostは、エンタープライズ向けに設計されたビジネスチャットツールで、大規模な企業でも対応可能です。オンプレミスでの導入に適しており、組織のニーズに応じたワークフローの構築が可能です。
- セキュリティ面: Mattermostは、銀行業界レベルのセキュリティを提供しており、AES-256ビット暗号化によるデータ保護や、SSO(シングルサインオン)による安全なログインが可能です。また、セキュリティイベントのログ記録やリアルタイムの監視機能も搭載しており、セキュリティ監査を強化したい企業にとって非常に有効です。
- URL: Mattermostのサービスサイト
4. Nextcloud Talk



- 特徴: Nextcloud Talkは、ファイル共有やコラボレーションに特化したツールで、チャット機能も強力です。特に、オンプレミス型で導入することで、企業内での安全なデータ管理とコミュニケーションを実現します。
- セキュリティ面: Nextcloud Talkはエンドツーエンド暗号化をサポートしており、会話の内容が外部に漏れることなく安全にやり取りできます。さらに、完全なオンプレミス運用が可能なため、データが外部のサーバーに保存されることなく、企業の内部で厳重に管理されます。また、GDPR(一般データ保護規則)に準拠しており、プライバシー保護も強化されています。
- URL: Nextcloudのサービスサイト
5. Zulip



- 特徴: Zulipは、スレッドベースのチャット機能を持つビジネスチャットツールで、複雑なプロジェクトでも効率的にコミュニケーションを管理できます。オンプレミス対応のツールで、特に大規模なプロジェクト管理に適しています。
- セキュリティ面: Zulipは、エンタープライズ向けのセキュリティ機能を提供しており、全データを暗号化して通信し、オンプレミス型で導入すれば、データは完全に自社の管理下で保存・運用されます。さらに、LDAP認証やSSOをサポートしており、強力なユーザー認証を実現します。
- URL: Zulipのサービスサイト
これらのツールは、特にセキュリティやデータ保護を重視する企業に適しており、業務の効率化と同時に、データ漏洩リスクを最小限に抑えることができます。
オンプレミス型ビジネスチャットの未来
オンプレミス型ビジネスチャットは、特にセキュリティやカスタマイズ性を求める企業にとって魅力的な選択肢です。クラウド型と比べると初期コストや導入の複雑さが課題として挙げられることが多いですが、それを補って余りある安心感と長期的なメリットが提供されます。企業がデータの安全性や業務フローに合わせたツールのカスタマイズを重視する場合、オンプレミス型は信頼性の高い選択肢です。今後の技術の進歩やビジネス環境の変化に応じて、オンプレミス型の価値はさらに高まっていくことでしょう。
今後もビジネスチャットの需要はさらに拡大し、その重要性はますます高まると予測されます。特にセキュリティを最重視する企業にとって、オンプレミス型の導入は長期的な信頼性を提供し、高度なデータ保護とカスタマイズ性を両立させます。業務効率化とセキュリティ強化の両方を実現するために、ビジネスチャットツールの選定には慎重な検討が必要です。