ビジネスチャットの普及に伴い、企業が直面する情報漏えいのリスクも急増しています。特にリモートワークの定着により、従業員が社外からアクセスする機会が増えたことで、機密情報が不正に流出するリスクが高まっています。社内外の関係者と効率的に情報共有できる便利なビジネスチャットツールも、一方で適切な管理がなされなければ大きなセキュリティリスクを抱えることになります。
この記事では、特にビジネスチャットに関連する情報漏えいのリスクと、その対策方法について解説します。具体的なセキュリティ機能や注意点、さらにセキュリティ対策が施されているおすすめのビジネスチャットツール5選を紹介し、企業の安全な運用を支援する情報を提供します。適切な対策を講じて、大切な情報を守りつつ効率的なコミュニケーションを実現する方法を探っていきましょう。
ビジネスチャットの普及と情報漏えいリスクの拡大
ビジネスチャットの普及とリモートワークの増加で、情報漏えいのリスクが高まっている背景について解説します。
1. ビジネスチャットと情報漏えいリスク
ビジネスチャットは、社内でのコミュニケーションを円滑にし、プロジェクトの進行状況を共有する便利なツールです。メンバー間でメッセージやファイルをすぐに共有できるため、効率が良くなる一方で、機密情報も含まれるため、適切な管理が必要です。
2. リモートワークとセキュリティリスクの増加
リモートワークでは自宅や外出先から会社のシステムにアクセスすることが増えますが、これがセキュリティリスクを高める原因になります。特に「シャドーIT」と呼ばれる問題が起きやすくなります。
– シャドーITのリスク
シャドーITとは、会社が許可していない個人のスマートフォンやパソコンで業務をすることです。この場合、会社の管理が及ばないため、情報漏えいやセキュリティの問題が発生しやすくなります。例えば、個人のスマホを使って機密情報をやり取りすると、そのデバイスが盗難やウイルス感染を受けたときに情報が流出するリスクがあります。
– 不正アクセスのリスク
ビジネスチャットはスマホやパソコンなど複数の端末からアクセスできますが、これもセキュリティのリスクを高めます。例えば、IDやパスワードが漏れてしまうと、悪意ある人が他のデバイスから不正にアクセスする可能性があり、情報が流出してしまうことがあります。また、端末が紛失した場合にも、その端末からのアクセスで情報が漏れてしまう危険があります
情報漏えいを防ぐためには、シャドーITを防止し、アクセス権限を適切に管理することが大切です。例えば、アクセスできる端末を限定し、パスワードを定期的に変更するなどの対策が効果的です。
ビジネスチャットに求められるセキュリティ機能とは?
ビジネスチャットツールを安全に利用するためには、いくつか重要なセキュリティ機能が欠かせません。以下に、特に企業での導入時に求められる基本的な機能を解説します。
1. IPアドレス制限
IPアドレス制限は、特定のネットワークからのみビジネスチャットにアクセスできるようにするセキュリティ機能です。例えば、社内LANや従業員の自宅からのアクセスは許可する一方で、外部のネットワークからのアクセスは制限することで、外部からの不正アクセスリスクを防止できます。この設定により、なりすましによる不正なログインが起きにくくなります。
2. 二段階認証
二段階認証は、ビジネスチャットにログインする際、パスワードに加えて「認証コード」を求める手段です。例えば、パスワードを入力した後にスマートフォンへ送信された認証コードを入力する形式で、万が一IDやパスワードが流出しても、認証コードを持たない第三者はログインできません。この追加のセキュリティステップで、アカウントの乗っ取りリスクを大幅に低減できます。
3. ログ管理
ログ管理は、チャットでのやり取りやアクセス状況を記録・保存する機能です。万が一、情報漏えいが発生した際に「誰が」「いつ」「どの情報に」アクセスしたかを追跡できるため、原因究明や今後の対策に活用できます。特にビジネスチャットを利用したファイル共有や会話の履歴が確認できるため、内部不正の早期発見や証拠保全の手段としても重要です。
4. 暗号化
暗号化は、メッセージの送受信内容を第三者が解読できないように保護する技術です。特に、エンドツーエンド暗号化(E2EE)は、送信者から受信者までデータを暗号化する技術で、通信経路上でデータが盗まれたり改ざんされたりするのを防ぎます。これにより、機密情報が外部に漏れず、データセキュリティが強化されます。
これらの機能を備えたビジネスチャットツールは、情報漏えいリスクを大幅に軽減し、安全な業務運営を支えます。企業にとって、これらのセキュリティ機能を標準装備したツールを選ぶことは、セキュリティ対策の基本です。
情報漏えい防止のための社内ルールと運用
情報漏えいを防ぐためには、ビジネスチャットの技術的なセキュリティ対策に加え、社内での運用ルールや社員教育も不可欠です。以下に、特に重要なポイントについてわかりやすく解説します。
1. 誤送信防止
ビジネスチャットでは、誤送信が情報漏えいの主な原因の一つです。誤った相手に機密情報を送ってしまうと、企業の信頼や業績にも影響を及ぼす可能性があります。対策としては、次のような方法があります。
- 送信前のダブルチェック: 社員がメッセージやファイルを送信する前に、送信先が正しいか確認するルールを定めます。確認画面や「送信前確認」のポップアップを表示する設定も有効です。
- アクセス権限の管理: メッセージやファイルのやり取りを必要な人だけがアクセスできるように制限することで、誤送信が起きても情報が外部に漏れるリスクを抑えます。
2. シャドーITの制限
シャドーITとは、会社が管理していない個人デバイスやアプリを業務で使うことです。これにより、会社のデータが不正にアクセスされるリスクが増大します。シャドーITの制限のためには、以下の取り組みが有効です。
- 個人デバイスの使用制限: 業務においては会社支給のデバイスのみを使用するようにルール化し、個人デバイスからのアクセスは制限します。これにより、セキュリティポリシーに従った安全な運用が可能になります。
- 教育と啓蒙活動: シャドーITの危険性について社員教育を行い、守るべきセキュリティポリシーを徹底させることで、リスクを未然に防止します。
3. パスワードの強化と管理
不正アクセスを防ぐために、パスワードの管理は非常に重要です。パスワードが弱かったり、定期的に変更しなかったりすると、ビジネスチャットに簡単に不正アクセスされる恐れがあります。安全なパスワード管理のポイントは次の通りです。
- 複雑なパスワードの使用: パスワードには、大小の英字・数字・記号を組み合わせ、推測されにくいものを設定します。これにより、ブルートフォース攻撃などによる不正アクセスを防止できます。
- 定期的な変更のルール化: パスワードを定期的に更新することで、過去のパスワードが流出している可能性に対処できます。また、同じパスワードを複数のサービスで使いまわさないことも大切です。
これらの運用ルールを社内で策定し、従業員全員が理解・徹底することで、ビジネスチャット利用による情報漏えいリスクを大幅に軽減できます。技術的な対策と併用することで、より安全にビジネスチャットを活用できる環境を整えましょう。
情報漏えいを防ぐために選ぶべきおすすめビジネスチャット5選
以下に、情報漏えいを防ぐために選ぶべきビジネスチャットツール5つと、それぞれの特徴やセキュリティ機能について詳しく解説します。
1. Tocaro



特徴: 利便性とセキュリティのバランスが取れており、日本の企業文化に合わせた使いやすいUI設計が特徴です。
セキュリティ機能
IPアドレス制限: 特定のネットワークからのみアクセス可能とすることで、不正アクセスを防止します。
二段階認証: ログイン時に追加の認証を求めることで、不正ログインのリスクを減少させます。
アクセスログの監視: チャットの操作履歴が追跡可能で、情報漏えいの原因究明に役立ちます。
2. LINE WORKS



特徴: 親しみやすいインターフェースと、業務向けに強化されたセキュリティが魅力で、スマートフォンでも操作しやすい設計です。
セキュリティ機能
IPアドレス制限: 社外からのアクセスを制限できるため、リモートワークでも安全に使用できます。
端末管理: デバイス認証を通して、許可された端末のみからのアクセスを許可する機能があり、不正アクセスを防止。
暗号化通信: 通信内容をエンドツーエンドで暗号化し、情報の盗聴や改ざんを防ぎます。
3. Chatwork



特徴: 日本製のビジネスチャットツールで、中小企業に人気です。シンプルで使いやすい設計と、必要なセキュリティ機能が揃っています。
セキュリティ機能
誤送信防止: メッセージの送信先を再確認する機能があり、誤送信による情報漏えいリスクを減少させます。
二段階認証: 追加の認証により、不正ログインを防止し、アカウントのセキュリティを強化。
アクセス権限の設定: 各メンバーの役割に応じたアクセス制限が可能で、情報漏えいリスクを低減。
4. Microsoft Teams



特徴: 大企業での利用が多く、Office 365とのシームレスな連携が可能です。グローバルな企業も多く利用している実績があります。
セキュリティ機能
IPアドレス制限: 特定の場所やネットワークからのアクセスを限定でき、リモートワークの多い環境にも適しています。
エンドツーエンド暗号化: 通信内容を安全に保護する暗号化技術を採用し、盗聴や改ざんを防ぎます。
データ損失防止(DLP): 機密情報の外部流出を防ぐためのフィルタリング機能を搭載しており、組織のデータを保護。
5. Slack



特徴: 世界中で広く利用されているチャットツールで、豊富なアプリ連携が特徴です。スムーズな業務管理をサポートします。
セキュリティ機能
二段階認証: パスワードに加え、デバイス認証を行うことで、アカウント乗っ取りリスクを軽減。
SSO(シングルサインオン): Slackアカウントへのアクセスをより安全に管理でき、アクセス管理が容易に。
エンタープライズグリッド: データ暗号化や認証の一元管理を可能にし、大企業にも対応できるセキュリティ体制。
これらのツールはいずれも高度なセキュリティ機能を備えており、情報漏えい防止に役立ちます。企業のニーズや業務フローに応じて、最適なビジネスチャットツールを選ぶことで、安全性と効率を両立させましょう。
情報漏えい対策のために企業が今後取るべきアプローチ
ビジネスチャットを安全に活用するためには、セキュリティ機能の導入だけではなく、社員一人ひとりのセキュリティ意識の向上と定期的な見直しが欠かせません。今後、企業が取るべきアプローチを解説します。
1. セキュリティ意識の向上
セキュリティ意識を高めるための教育は、社員が自発的にリスクを防ぐ行動を取るために重要です。誤送信やシャドーITなど、意識が欠如したことで発生するリスクは多いため、情報漏えいの原因を理解し、それに対する具体的な対策を身に付けることが必要です。定期的な研修や社内ポスター、メールでの啓蒙活動などが効果的です。
2. 定期的なセキュリティ見直し
技術は常に進化しており、セキュリティ対策も随時見直しが必要です。ビジネスチャットツールやサイバー攻撃の手法も進化しているため、最新の脅威に対応できるよう、以下のアプローチが推奨されます。
- 最新の脅威情報の共有: 最新のセキュリティ情報や脅威についての情報を定期的に社内で共有することで、従業員の危機感を維持します。
- セキュリティポリシーの見直し: 社内での利用ルールやセキュリティ方針が最新のリスクに対応できるよう、定期的な見直しと更新が求められます。例えば、新たな脅威や攻撃手法に合わせて、アクセス権限や暗号化の設定などを見直します。
3. 技術的なアップデート
技術的にも常に最新の対策を講じるために、ソフトウェアのアップデートやセキュリティツールのバージョン管理が必要です。セキュリティパッチを適用することで、最新の脆弱性を補強し、新たな攻撃手法に対抗する力を維持します。
4. 定期的なテストと検証
セキュリティ対策が適切に機能しているかを確認するため、定期的なセキュリティテストや内部監査も重要です。特に、ペネトレーションテストや脆弱性スキャンを行うことで、ビジネスチャットの弱点やリスクを事前に洗い出し、対応策を取ることができます。
企業における情報漏えい対策は、セキュリティツールの導入と共に、全社員の意識と運用の両面から強化していくことが不可欠です。継続的な改善とともに、新たなリスクに対する準備を怠らず、安全なビジネスチャット環境を構築していきましょう。
ビジネスチャットを安全に活用するために
この記事でご紹介したビジネスチャットのセキュリティ対策をもとに、組織全体で情報漏えいリスクに対する意識を高め、ツールの導入と運用を見直しましょう。具体的には、セキュリティ機能が充実したビジネスチャットツールの選定、アクセス権限の適切な管理、社員教育による意識向上、そして最新の脅威に対応するための継続的な見直しが必要です。
これにより、ビジネスチャットの利便性を保ちながら、安全なコミュニケーション環境を整備し、組織の情報を守ることができるでしょう。