中小企業の成長を支えるIT導入補助金とは?

日本の中小企業の成長をサポートするための補助策の一つである「IT導入補助金」が注目されています。「IT導入補助金に興味はあるけど、どんな会社なら補助金をもらえるのか知りたい」などこの補助金について詳しく知らない方も多いでしょう。

そこで、今回はこの「IT導入補助金」に焦点を当て、そのメリットやデメリット、対象者、種類、申請方法などを詳しく解説します。これから申請を考えている方、必見です。

中小企業の成長を支えるIT導入補助金とは?

「IT導入補助金」とは、経済産業省が実施している補助制度の一つで、中小企業や小規模事業者、個人事業主が情報技術(IT)を導入する際の費用を支援するためのものです。ITの導入により生産性を向上させることや新たな事業展開を図ること、経営改革などを進めることを目的としています。

具体的には、クラウドサービスやAIを活用した業務支援システム、ECサイト構築などのITツールの導入費用や、それらを運用・保守するための費用、またITツールを効果的に利用するための教育・研修費用などが補助の対象となります。

IT導入補助金のメリットとは?

「IT導入補助金」のメリットを理解するためには、まず何が補助の対象になるのかを知ることが大切です。上記でもご説明しましたが、具体的にはクラウドサービス、AIを活用した業務支援システム、ECサイト構築、その他ビジネスを効率化や拡大を目指すためのITツールの導入費用が対象となります。また、これらのシステムを効果的に活用するための研修や教育も補助の対象となります。
それでは、具体的なメリットについてご説明します。

⒈経済的負担の軽減

ITツールの導入には多大な費用がかかる場合があります。しかし、この補助金を利用することで、その負担を軽減することができます。中小企業や小規模事業者にとっては大きなメリットと言えるでしょう。

⒉生産性の向上

この補助金を活用してITツールを導入することで、業務の効率化や生産性の向上が期待できます。また、新しいビジネスモデルの開発やサービスの向上にもつながるでしょう。

⒊ビジネスの変革・拡大

ITツールの導入により、ビジネスの運営方法を変革したり、新たな市場への展開を図ることも可能となります。これは企業の成長や競争力向上に直結します。

⒋デジタル化の推進

社会全体がデジタル化を推進している中で、ITツールの導入は避けて通れない課題となっています。補助金を活用することで、企業のデジタル化を円滑に進めることができます。

⒌教育・研修の機会

IT導入補助金は、新たなITツールを導入するだけでなく、それを効果的に活用するための教育や研修も支援します。これにより、社員のスキルアップや組織全体の能力向上を実現することができます。

しかし、IT導入補助金にはデメリットも存在します。

IT導入補助金のデメリットとは?

IT導入補助金には、中小企業や小規模事業者がITツールを導入するための経費を補助するという大きなメリットがありますが、一方でいくつかデメリットもあります。以下に簡単にご説明します。

⒈申請の手間と時間がかかる

IT導入補助金の申請は、具体的な事業計画の作成、申請書類の準備など、相応の手間と時間を必要とします。特に中小企業や小規模事業者では、このような事務作業に費やすリソースが限られている場合が多いため、負担が多くなるでしょう。

⒉審査が厳しい

申請をしても必ずしも補助金が交付されるわけではありません。申請内容は経済産業省によって厳しく審査され、対象となるITツールの導入が企業の成長にどの程度寄与するか、計画の具体性や実現可能性などが評価されることになります。

⒊自己資金を準備しなくてはいけない

補助金は原則として事業完了後に支給されます。つまり、ITツールの導入や関連する教育・研修など、事業を進めるための経費は当初は自己負担となります。補助金が下りるまでの間、自己資金で賄う必要があるため、しっかりと予算を取る必要があります。

⒋報告義務がある

補助金を受けた事業者は、事業の進捗や結果について報告を行う義務があります。これにより、事業運営だけでなく報告書の作成など、追加的な業務が発生します。

これらのデメリットを理解した上で、IT導入補助金の活用を検討することが大切です。それぞれの企業の状況により、利益と負担が異なるため、自社にとって最適な選択をするためにも、メリットだけでなくデメリットもしっかりと理解しておくことが重要となります。

IT導入補助金の対象者とは?

次に、IT導入補助金の対象者について説明しましょう。

この補助金の対象は、中小企業、小規模事業者、個人事業主で、ITツールを導入しようとするすべての業種に対して適用されます。ただし、補助金を受けられるかどうかは、事業計画の内容や補助金の使途などが審査されます。

IT導入補助金は多くの企業・組織にとって大きなチャンスとなり得ますが、申請には手間と時間がかかるため、それが負担とならないよう計画的に進めることが推奨されます。また、補助金を最大限に活用するためには、自社のニーズに最適なITツールを選び、その導入により生産性向上や経営改革をいかに進めるかを具体的に計画することが求められます。

詳しくは、IT導入補助金2023のホームページをご覧ください。

IT導入補助金の種類とは?

IT導入補助金の種類は4種類あります。それぞれ解説していきます。

通常枠(A・B類型)
中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部が補助されます。自社の強みや弱みを認識、分析し、把握した経営課題や需要に合ったITツールを導入することで、業務効率化・売上アップといった経営力の向上・強化を図ることが求められます。
A類型とB類型では、ITツール導入で生産性が高まる業務プロセスの数や賃上げ要件など、申請条件にいくつかの違いがあるため確認が必要です。

セキュリティ対策推進枠
中小企業・小規模事業者等がサイバーインシデント(いわゆるサイバー攻撃などによる被害)が原因で事業継続が困難となる事態を回避するとともに、サイバー攻撃被害が供給制約・価格高騰を潜在的に引き起こすリスクや生産性向上を阻害するリスクを低減することを目的としています。

デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
中小企業・小規模事業者等のみなさまが導入する会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの経費の一部を補助することで、インボイス対応も見据えた企業間取引のデジタル化を推進することを目的としています。

これらの種類の中から、自社の状況やニーズに最適な補助金を選ぶことが重要です。また、各補助金の詳細な条件や手続きは公募要領などで公表されるため、それらを確認してから申請を行うようにしましょう。最新の情報を確認することで、補助金の利用をスムーズに進めることができます。

補助率・補助上限額・申請類型一覧

補助の具体的な内容を確認しましょう。

通常枠(A類型・B類型)の補助額・補助率
A類型:補助率1/2以内、補助額5万~150万円未満
B類型:補助率1/2以内、補助額150万~450万円以下

セキュリティ対策推進枠の補助額・補助率
補助率1/2以内、補助額5万円~100万円

デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の補助額・補助率
ITツール:補助率3/4以内or2/3以内、補助額下限なし~350万円以下
パソコン・タブレットなど:補助率1/2以内、補助上限10万円以内
レジ・券売機:補助率1/2以内、補助上限額20万円

詳しくは、IT導入補助金2023のホームページをご覧ください。

IT導入補助金ではどんなITツールを導入できるのか?

IT導入補助金を利用して導入できるITツールは、ビジネスの様々な面で活用できるものが多く含まれています。以下に、具体的にどのような種類のITツールが対象となるのかを説明します。

クラウドサービス
クラウドストレージ、メール、文書共有、業務管理、会計・経理、人事・労務、顧客管理(CRM)、プロジェクト管理などのクラウドサービスが対象となります。

ウェブサイト・ECサイト構築ツール
ウェブサイトやECサイト(ネットショップ)の開設や運営に必要なツールも補助の対象となります。

業務特化型ソフトウェア
特定の業界や業務に特化したソフトウェアも補助対象です。例えば、不動産業向けの物件管理ソフトウェアや、医療業界向けの患者管理システムなどがあります。

リモートワークツール
ビデオ会議ツール、リモートアクセスツール、タスク管理ツールなど、リモートワークを支援するITツールも補助対象となっています。

AI・IoTツール
AIを活用したデータ分析ツールや、IoTデバイスを活用した業務効率化ツールなども補助対象に含まれています。

セキュリティツール
サイバーセキュリティ対策を強化するためのツールも補助対象となっています。これには、ファイアウォールやウイルス対策ソフトウェア、不正侵入検知システムなどがあります。

さらに、デジタル化基盤導入枠ではパソコン・タブレットなどのデバイスや、レジ・券売機なども補助対象になりえます。

なお、これらのツールが補助対象であるとしても、それが補助金の対象となるかどうかは具体的な補助金の公募要領によります。また、導入するITツールが補助対象であることだけでなく、その導入により企業の生産性向上や業務改善が期待できることが重要となるため、ITツールの選定は慎重に行う必要があります。

申請から事業完了までのスケジュール

IT導入補助金の申請から事業完了までの一連の流れを理解することは、申請をスムーズに進め、計画的にITツールを導入するために重要です。以下にその主なスケジュールをご説明します。

⒈事前準備(ITツール選定、事業計画作成など)

まず初めに、補助対象となるITツールを選定し、その導入による事業計画を作成します。補助金の公募要領を確認し、補助対象となるITツールの選定と事業計画の詳細な内容を整えます。

⒉補助金の申請

準備が整ったら、補助金の申請を行います。申請書類には、事業計画の内容や予算、ITツールの詳細などを記入し、申請期間内に提出します。

⒊審査

申請書類は審査され、補助金の交付が決定します。この審査結果により、補助金の交付が決定されます。

⒋ITツールの導入

審査結果の通知を受けたら、計画通りにITツールの導入を始めます。ITツールの導入は、契約から設定、運用開始までを含みます。

⒌中間報告・最終報告

ITツールの導入が終わったら、その進行状況や結果を報告します。通常、中間報告と最終報告の2回に分けて報告を行います。

⒍補助金の支給

最終報告が承認されたら、補助金が支給されます。通常、この支給は一括で行われます。以上が、大まかな申請から事業完了までの流れとなります。

ただし、これは一般的な流れであり、具体的なスケジュールや手続きは公募要領によります。公募要領を確認し、最新の情報に基づいて計画を進めることが重要です。

IT導入補助金申請をスムーズに進める5つのコツ

IT導入補助金の申請は、準備や手続きが複雑であるため、うまく進めるためのいくつかのコツがあります。5つのコツを簡単にご説明します。

⒈事前準備を怠らない
具体的な導入計画や予算、ITツールの選定など、申請に必要な情報をあらかじめ準備しておくことが重要です。また、補助対象となるITツールが補助金の適用基準に合致しているかを確認することも忘れずに行いましょう。

⒉公募要領をよく読む
公募要領には、申請に必要な条件や手続きの詳細が記載されています。これらをしっかりと理解し、要領通りに申請を進めることがスムーズな申請のための重要なポイントです。

⒊計画の明確性と具体性
申請書には、ITツール導入による事業の改善効果や、導入後の運用計画などを具体的に記述することが求められます。これらの計画が明確で具体的であればあるほど、補助金の審査に通りやすくなるでしょう。

⒋専門家のアドバイスを活用する
IT導入補助金の申請は複雑であり、初めて申請する場合には専門的な知識や経験が求められます。そのため、必要であれば専門家のアドバイスを活用することをお勧めします。補助金申請のサポートを行うコンサルタントや、ITツールの導入を支援するIT企業などからアドバイスを受けることが可能です。

⒌締め切りを見逃さない
公募要領に記載された申請締め切りを厳守することも重要です。準備に時間がかかることを考慮し、余裕を持って申請作業を進めましょう。

IT導入補助金の活用事例4選

2020年度以降にIT導入補助金に採択された企業のITツール活用事例をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

農業:ECサイトで全国の個人消費者へのPRを実現「市原ファーム」

出典:市原ファーム

【悩み】地域ブランド「石見鴨(いわみがも)」の販路開拓が課題

【導入したITツール】連携型47CLUB(よんななクラブ)基本Bパック01
IT導入補助金の申請からサイト上のショップページ構築まで、Zoomや電話によるリモート打ち合わせで丁寧にサポートしてもらったおかげで大変スムーズに進めることができた。

【効果】ECサイトと地方新聞への 広告掲載で全国へのPRを実現

林業:ITツール×ドローンで森林調査にかける人員が約8割減「有限会社天女山」

出典:有限会社天女山

【悩み】林業ならではの厳しい経営環境とIT投資への躊躇

【導入したITツール】3D GISツール「ScanSurvey Z Pro」
このツールはカメラドローンにより取得した点群データの解析ができるだけでなく、GISとして活用することができるという優れもので役立った。

【効果】森林調査人員が約8割減し、 調査コスト削減も実現

保育業:ITツールを活用して職員も園児も笑顔で集える認定こども園に大胡第3こども園」

出典:大胡第3こども園

【悩み】職員の労務管理や児童の登降園管理の効率化

【導入したITツール】保育園・幼稚園向けITツール「キズナコネクト」
労務管理、職員シフト管理、児童台帳、登降園管理、保育料管理、お知らせ配信といった業務の効率化を図る、保育園・幼稚園運営に特化したITツールです。データ入力のためのタブレット(iPad)やシステムと連動したカードリーダーもIT導入補助金でレンタルし、職員と園児全員分のタイムカードもIC化した。

【効果】労務管理の作業時間が7割も軽減し、保育業務に力を注げるようになり、コミュニケーションも活発になった

運輸業:船舶のリモート環境整備で船上オフィスの効率化を実現しIT推進で品質向上を狙う「株式会社藤進」

出典:株式会社藤進

【悩み】船舶特有の事情で発生する膨大な書類や事務処理の効率化

【導入したITツール】船内と本社間の業務フロー改革を目指し、ノートPCと「Office 365」等
船舶へのWi-fi導入を進めながら、Googleドライブ上でOffice365を使って直接事務処理を行えるような業務フローを構築しました。船長はノートPCを使うのが初めてのため、船舶まで出向いて直接利用方法を指導したり、PCに慣れている船員に協力してもらったり、運用までの準備期間は大変でしたが現在では問題なく業務を行えるようになった。

【効果】クラウド上でリアルタイムにデータ入力。船内・本社間の業務効率を大幅アップ(作業量も約5割削減、約9割の書類削減に成功)

IT導入補助金を活用して新たな一歩を踏み出しましょう

IT導入補助金は、中小企業のIT化を加速させる強力な支援策です。初期費用の負担を軽減し、新たなビジネスチャンスを創出する可能性があります。一方で、申請手続きの煩雑さや自己資金の必要性など、理解しておくべきポイントもあります。十分な準備と計画をもとに、最大限に活用していきましょう。

IT導入補助金の詳しい情報はこちらをご覧ください。

ワークプロセスマネジメントプラットフォーム
Tocaro(トカロ)

仕事のあらゆる行動を定量化し、成果につながるプロセスを見える化します。結果、意思決定の柔軟性を高め、チームの生産性を高めることが可能です。さっそくワークプロセスマネジメントプラットフォームのTocaroを使ってみましょう。