サステナビリティトランスフォーメーション(SX)の4つのメリット

「サステナビリティ」という言葉をご存じですか?「サステナビリティ」とは、持続可能性を意識した社会や経済活動の推進を目指す概念であり、近年とても注目を集めています。世界的な環境問題や社会問題の深刻化が背景にあり、飲食業界やファッション業界などの企業や個人、政府など様々なステークホルダーがサステナビリティに向けた取り組みを行っています。

特に、若い世代を中心に、サステナビリティに関心を持つ人が増えてきており、サステナビリティを取り入れた商品やサービスが注目を集めるようになっています。また、企業においても、サステナビリティに配慮した商品の開発や環境負荷の低減などの取り組みが進んでいます。サステナビリティを売りにした商品は、日に日に増えてきています。

では、企業におけるサステナビリティトランスフォーメーションとは一体なんでしょうか?

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)という言葉は、2020年8月の経済産業省の提言「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間取りまとめ~サステナビリティトランスフォーメーション(SX)の実現に向けて~」から始まった、新しい経営のあり方についての呼び方です。

コロナ禍によって、サステナビリティトランスフォーメーションは更に重要な概念となっています。新型コロナウイルスの感染拡大により、社会や経済システムが大きく変化し、持続可能性を考慮した社会への変革が求められるようになってきたからです。

この記事では、サステナビリティトランスフォーメーション(SX)について徹底解説をします。

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)とは?

サステナビリティトランスフォーメーションとは、持続可能性を意識した社会や経済システムの構築を目指す変革のことです。環境問題や社会問題の深刻化が背景にあり、既存のシステムやビジネスモデルに限界を感じる人々が増えてきたことがきっかけとなり、持続可能性を追求した社会や経済の実現が求められるようになっています。

経済産業省 経済産業政策局の『伊藤レポート3.0』(2022年8月)によると、

社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを「同期化」させていくこと、及びそのために必要な経営・事業変革(トランスフォー メーション)を指す。

社会のサステナビリティと企業のサステナビリティの同期化とは、企業が社会の持続可能性に資する 長期的な価値提供を行うことを通じて、社会の持続可能性の向上を図るとともに、自社の長期的かつ 持続的に成長原資を生み出す力(稼ぐ力)の向上と更なる価値創出へとつなげていくことを意味する。

とあります。

勘違いしがちなのは、社会課題の解決に貢献する面のみを課題としてしまうことです。サステナビリティトランスフォーメーション(SX)とは、経済成長が重要となってきます。事業基盤である環境・社会を維持しながら、どちらにも貢献する経営へ移行することなのです。

企業が長期的に成長するには、「稼ぐ力」と「ESG(環境・社会・企業統治)」の両立を目指す経営と、投資家との対話の仕方を変える必要があります。

コロナ禍で重要性を増したサステナビリティトランスフォーメーション(SX)

コロナ禍を経て、サステナビリティ トランスフォーメーションはより重要な概念となりつつあります。コロナ禍を経験し、世界中で様々な社会・経済的な問題が浮き彫りになりました。多くの企業が深刻なダメージを受けてしまい、企業戦略の見直しを迫られています。

そして、社会や経済システムが大きく変化し、持続可能性を考慮した社会への変革が求められるようになってきています。

例えば、企業の働き方として、テレワークやオンライン会議など、新しい働き方が取り入れられるようになり、交通量の削減やエネルギー消費の削減につながっています。また、地域に根ざした小規模な生産者に注目が集まるなど、ローカル志向の経済活動が推進されるようになっています。

今後もコロナ禍のように、社会経済に大きなインパクトを与える脅威の出現もあるかもしれません。そのため、サステナビリティを念頭に置いた取り組みが求められ、企業は持続可能性を重視した経営への転換が求められるようになってきているのです。

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)とデジタルトランスフォーメーション(DX)の違いとは?

最近、SXやDXなど同じような言葉を耳にしてどっちが何なのか分からなくなってしまうことはありませんか?サステナビリティトランスフォーメーション(SX)とデジタルトランスフォーメーション(DX)は、それぞれ異なるコンセプトを持つ変革です。

企業が生き残りをかけて行う「経営や組織的な変化」という意味では、両者は共通しています。

DX:新しいデジタル技術を浸透させることで、人々の生活をよりよく変革させることです。例えば、AIやIoTなどの技術を導入することで、業務プロセスの効率化や新しいサービスの提供を可能にすることが目的です。


SX:環境問題や社会問題の深刻化が背景にあり、既存のシステムやビジネスモデルに限界を感じる人々が増えてきたことがきっかけとなり、持続可能性を追求した社会や経済の実現が求められるようになったため、企業と社会ともに持続可能性を求めて中長期的な目的で行う取り組みになります。持続可能性を追求し、地球環境の保全や社会の公正性、経済の発展を両立させることを目指しています。

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、技術的側面に焦点を当てた変革で、サステナビリティトランスフォーメーション(SX)は、持続可能性を意識した社会的、経済的側面に焦点を当てた変革であると言えます。

ただし、デジタルトランスフォーメーション(DX)とサステナビリティトランスフォーメーション(SX)は、相互に関連している場合があり、例えばデジタル技術を活用して環境問題に取り組むことができるなど、DXとSXはどちらか一方に取り組むのではなく、2つをうまく組み合わせることが大切なのです。

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)の4つのメリットとは?

企業がサステナビリティトランスフォーメーション(SX)を進める中で、どのようなメリットがあるのでしょうか?代表的な4つのメリットをご紹介します。

⒈企業のイメージが向上する

世界の金融市場に大きな影響を与える激しい気候変動や資源の枯渇・災害リスクによって、投資家によるESG投資(環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う投資のこと)市場が拡大しています。自社の利益だけを追求している企業よりも、よりよい社会を目指して積極的に貢献活動に取り組んでいる企業のほうが、企業としてのブランディング強化に繋がり、イメージが向上します。

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)を通じて企業と社会の持続可能性を実現している企業は、ESG投資(環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う投資のこと)の評価にも繋がり、投資される可能性が上がるというメリットがあります。

ステークホルダーとの関係の強化

2020年12月の財務省「ESG投資について」というレポートにて、ESGを重視した投資方法である「ESG投資」(環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う投資のこと)の市場規模が世界的に拡大していることを公表しました。

今までは短期的かつ財務的な情報のみで判断するのが主流だったのが、環境や社会、ガバナンス(健全な企業経営を目指す企業自身による管理)などの非財務情報をもとに、中長期的な視点で企業の成長を見極める動きが活発化し始めています。

積極的にサステナビリティトランスフォーメーション(SX)を推進している企業は、おのずと投資家や株主からの評価が高くなることが期待できるでしょう。その結果、企業にとって資金を集めやすくなり、キャッシュフローが改善され、将来にわたって経営を強化することが可能です。

また、株主だけではなく、従業員との関係の強化も期待できます。

従業員は、仕事が社会貢献に繋がっているという実感を得られることで働くモチベーションが向上します。近年では、サステナビリティやSDGsの取り組みを就活の軸に置く学生が増えているので採用への影響もあるでしょう。

⒊環境への影響の削減

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)は、企業が環境に対する影響を最小限に抑えるための取り組みを促進します。これにより、二酸化炭素排出量の削減や自然資源の保護など、環境に対するポジティブな影響が生まれます。「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」が注目されている昨今ではとても大切なことです。

⒋持続可能なビジネスモデルの構築

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)を始めることにより、持続可能なビジネスモデルの構築を促進します。これにより、企業は将来にわたって成長し、繁栄することが可能となります。
企業は、環境に配慮した製品・サービスを提供することで、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」を意識している消費者から支持されるようになります。例えば、再生可能エネルギーの利用や、リサイクル可能な製品の販売などがあげられます。

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)のデメリットとは?

上記ではメリットをご説明しましたが、もちろん良い点ばかりではありません。サステナビリティトランスフォーメーション(SX)のデメリットをご紹介します。

費用の増加
サステナビリティトランスフォーメーション(SX)には、環境や社会への影響を考慮した取り組みが必要となります。一朝一夕で実現できるものではなく、成果が目に見えるまで時間がかかります。そのため、企業には多額の費用が必要となり、経営効率の低下や利益の減少などの問題が生じる可能性があります。

難易度の高さ
サステナビリティトランスフォーメーション(SX)の実現により、企業にとっての新たな課題や問題が生じる可能性があります。例えば、サプライチェーンの再構築や、新しい製品・サービスの開発など、難易度の高い課題が待ち受けていることがあります。失敗しないためにも、サステナビリティトランスフォーメーション(SX)の専門家やコンサルタントに相談しながら進めるといいでしょう。

経営者の意識の不足による見切り発車
サステナビリティトランスフォーメーション(SX)は、経営者や企業の幹部層が環境や社会への影響を考慮した経営方針を打ち出すことが必要です。しかし、経営者の意識や理解が不足している場合、サステナビリティトランスフォーメーションの実現が困難となる可能性があるため、経営者がしっかりとSXの基本を学ぶことが大切です。

政策や法制度の変化による影響
政策や法制度の変化によって、企業にとってのリスクや負担が変わる場合があります。例えば、環境に配慮した製品・サービスを提供することが、政府の補助金などで支援される場合もあれば、環境規制の強化によって負担が増加する場合もあります。SXを専門とする部署を立ち上げて常に情報をアップデートすることが重要です。

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)を実現する3つの取組みとは?

では、企業でサステナビリティトランスフォーメーション(SX)を実現するためにはどのようにすればいいのでしょうか?経済産業省 経済産業政策局の『伊藤レポート3.0』(2022年8月)では、3つの取り組みが必要としています。

⒈社会のサステナビリティを踏まえた目指す姿の明確化

まずは、社会のサステナビリティも踏まえつつ、自社が長期的に目指す姿を明確化することが重要になります。

社会的課題の解決と企業価値の向上を両立するビジネスモデルを構築するには、長期スパンで改良に取り組み、事業として展開することが必要となります。自社の事業活動を通じて解決する重要課題を特定することが求められるのです。その上で、自社の価値観や重要課題が一致し、どのように社会に価値を提供していくのか、それによってどのように長期的な価値向上を達成するかという、自社独自の価値創造ストーリーをイメージすることが必要になります。

⒉目指す姿に基づく長期価値創造を実現するための戦略の構築

企業には目指す姿に基づき、下記の内容が求められます。
・具体的にどのように価値創造を実現していくか
・企業全体の長期価値創造の在り方を示す長期戦略を構築する
・その具体化に向けた短・中・長期別の戦略を組み立て

要するに、どのようなビジネスモデルを通じて社会的課題の解決を目指し、どのように企業価値の向上に結び付けるのかについて長期的な戦略を構築することが必要となってくるのです。そのためには、投資家や取引先などと長期目線の対話を行うことや自社のビジネスに影響を及ぼす可能性のある環境変化などのリスクを想定することも有益です。

⒊長期価値創造を実効的に推進するための KPI・ガバナンスと、実質的な対話を通じた更なる磨き上げ

長期的に持続的な企業価値向上を実現するためには、KPI の設定(企業や組織の目標を達成するために行う日々の活動の具体的な行動指標)とガバナンス体制(健全な企業経営を目指す企業自身による管理体制) の整備が有効だと言われています。企業は、目指す姿とそれに基づく戦略を着実に構築し実行するとともに、外部環境の変化等に応じて適切な見直しを図ることが求められるのです。

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)はSDGs達成に向けた企業貢献

日本社会や経済は、人口の減少が止まらず、超少子高齢化社会を迎え、右肩上がりの経済成長から持続可能性を重視した社会モデルへシフトしていくことが求められています。

消費者や投資家は、環境や社会に配慮した企業に対して好意的なイメージを持っており、サステナビリティトランスフォーメーション(SX)に取り組むことは企業価値の向上につながるとされています。

日本の企業にとっては、新しい経営改革の中でサステナビリティトランスフォーメーション(SX)を取り入れて行く道筋を早急に作らないといけないところまできています。

‍しかし、高度に複雑でデジタルテクノロジーやAIの活用なしには進められないサステナビリティトランスフォーメーション(SX)推進は、気軽にできることではなくとても大変なことです。

自社内でしっかりと方向性を定めて、サステナビリティトランスフォーメーション(SX)推進を進めていきましょう。

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