シャドーITの脅威とその検知方法

近年、多くの企業がデジタル変革の波に乗り、業務効率や顧客体験を向上させるためのさまざまな技術を導入しています。これらの技術革新は確かに多くのメリットをもたらす一方で、新たな課題やリスクも生じています。その中で、特に注目されるリスクが「シャドーIT」という現象です。会社公式のIT部門を通じずに、個々の部門や社員が独自に技術やソフトウェアを導入・使用することが増えており、この非公式な手段が企業の情報セキュリティやデータ管理の基準を揺るがせています。

シャドーITは、短期的には業務の効率化や迅速な対応のための手段として見られがちです。しかし、長期的にはデータの不整合、セキュリティ侵害、業務プロセスの混乱など、数多くの問題を引き起こすのです。企業は、デジタル戦略を進める中で、このシャドーITのリスクを見過ごすことなく、適切に管理し、その検知方法と根絶策を策定することが求められています。

この記事では、シャドーITがもたらすリスクやその背後にある要因、そしてシャドーITを効果的に検知し、企業全体のITガバナンスを強化する方法について詳しく解説します。シャドーITは根絶しなければいけないものです。この記事で一緒に学びましょう。

シャドーITとは?

現代の企業は、数多くのITシステムやアプリケーションを導入して、業務の効率化や情報の一元管理を図っています。しかし、その裏側で、非公式に導入されたり使用されたりしているシステムやアプリケーションがあることをご存知でしょうか? それが「シャドーIT」です。このシャドーITを知らないままでいると、企業にとって大きなリスクとなり得るため、その本質を理解し、適切に対処することが必要なのです。


「シャドーIT」とは、組織の公式な承認やプロセスを経ずに、個々の部門や従業員が独自に導入、または利用しているITシステムやアプリケーションのことを指します。これには、クラウドサービスやSaaS(Software as a Service)製品、無料のソフトウェア、または社外のベンダーから入手したアプリケーションなどが含まれます。

シャドーITは、一見、業務の効率化や迅速な対応を可能にするように見えますが、組織全体の情報セキュリティやデータ管理の基準を乱す可能性があるため、適切な管理と対策が必要です。これから、その検知方法や対処法について深く探る前に、シャドーITの存在とそのリスクを理解し、組織内の他の関係者と共有することが重要です。

なぜシャドーITが発生するのか?

では、なぜシャドーITが発生するのでしょうか。以下は、シャドーITが生まれる主な原因です。

1.手続きの煩雑さ

組織の大小に関わらず、正式なITシステムやアプリケーションの導入には、予算の確保、ベンダー選定、セキュリティチェック、そして様々な部門からの承認等、数多くのプロセスが伴います。これらのプロセスは、確かに企業のリスクを最小限に抑えるために重要ですが、一方で、業務の迅速な進行を阻害する要因となり得ます。

特に、業務の効率化や競争力強化を求めるビジネスの現場からすると、このような長い手続きは「時間の無駄」と感じられることがしばしばあります。結果として、手間を省くためや迅速な判断を下すために、公式の手続きをスキップして独自にITツールを導入するケースが増加してしまっているのです。

2.既存のITシステムへの不満

公式に提供されているITシステムやアプリケーションが、現場のニーズや要望を十分に満たしていない場合、シャドーITのリスクは高まります。例えば、公式のシステムが古くて動作が遅い、インターフェースが使いにくい、または特定の業務特有の機能が不足している場合などです。

社員は、業務の効率を上げるため、または業務のクオリティを確保するために、自らの判断で外部のアプリケーションやツールを探し、それを導入・利用することを選択してしまうケースが多いのです。

3.新しい技術への好奇心

近年、テクノロジーの進化は目覚ましく、新しいアプリケーションやツールが次々と登場しています。特に若い世代の社員の中には、新しい技術やツールに興味を持ち、それを業務に取り入れたいと考える人も少なくありません。

また、プライベートで使っている便利なアプリやツールを、業務にも取り入れたいというニーズも見られます。このような場合、公式の承認プロセスを待つのではなく、自らが試してみることで、その有効性や適合性を確認しようとする動きが見られます。

これらの発生原因を理解することで、シャドーITへの対策もより具体的に、かつ効果的に進めることが可能となります。次のステップでは、これらの原因を踏まえた上で、シャドーITのリスクを最小限に抑えるための実践的な方法について解説します。

シャドーITがもたらす潜在的リスクとは?

企業の情報管理において、目に見えるリスクだけが問題ではありません。目に見えない部分、つまり「シャドーIT」と呼ばれる非公式のITシステムやアプリケーションが、意外と多くの企業に潜んでいます。この隠れた存在が、実は企業にとってどれほどのリスクを持っているのか。具体的な事例を通じて、シャドーITのリスクを深堀りしていきましょう。

1.セキュリティの脅威

セキュリティは、企業の情報資産を守る最も基本的な要件の一つです。公式に承認されたITシステムやアプリケーションは、多くのセキュリティチェックや監査を経て導入されます。それに対して、シャドーITは公式のセキュリティチェックを受けていないため、外部からの攻撃や内部からの情報流出のリスクが非常に高くなります。

事例
過去には、大手企業で社員がシャドーITとして利用していたクラウドストレージサービスがセキュリティ侵害を受け、顧客の個人情報や企業秘密が流出する事件が発生しています。このような事例は、企業のブランドや信頼を大きく損なうだけでなく、法的な制裁や巨額の損害賠償を招く可能性もあります。

2.データの不整合

情報の整合性は、企業の意思決定や業績分析において極めて重要です。公式のITシステムを通じて集められるデータは、定められたフォーマットや基準に基づいて整理・集計されるため、高い信頼性を持ちます。ところが、シャドーITを用いて収集されたデータは、これらの基準やフォーマットが統一されていない可能性が高いため、データの不整合が発生するリスクが増加します。

事例
例えば、ある製造業の企業で、部門ごとに異なるシャドーITを利用して業績データを管理していた結果、年度末の業績集計時にデータの不整合が発覚しました。オフィシャルなシステムとの間で、数値が一致しない問題が生じ、結果として業績報告の遅延や、外部への信頼の損失などの重大な影響をもたらしました。

これらのリスクを踏まえると、シャドーITの存在がどれほど企業にとって危険であるかが明らかとなります。シャドーITを根絶するための対策を速やかに講じることで、これらのリスクを未然に防ぐことが可能となります。次のセクションでは、具体的な対策について詳しくご紹介いたします。

シャドーITを効果的に検知する方法とは?

企業の情報管理において、シャドーITはまるで氷山の一角のような存在です。見えている部分だけでは真のリスクを把握することはできません。シャドーITのリスクを適切に対策するためには、まずその存在を確実に検知することが不可欠です。以下、そのための具体的な手法を解説します。

1. ネットワークの監視

ネットワーク内の通信を監視することで、公式に承認されていないアプリケーションやサービスからのトラフィックを検知します。

具体的な方法

トラフィック分析: 組織内のデータ通信のパターンを学び、異常な通信を検知する。例えば、通常使用されない時間帯に大量のデータが外部へ送信される場合など。

エンドポイントの監視: 個々のデバイスにインストールされているアプリケーションのリストを取得し、非公式のアプリケーションの使用を検知する。

特定のIPアドレスやポート番号、通信パターンをもとに、不審な通信をフィルタリングして検知します。例えば、企業公式で使用しているクラウドサービスとは異なるIPアドレスからの大量のデータ転送が発生していれば、それはシャドーITの疑いがあります。

2. クラウドアクセスセキュリティブローカー(CASB)の導入

CASBは、企業のクラウド利用をセキュアにし、コンプライアンスを維持するための中間ゲートウェイです。

具体的な方法

リアルタイム監視: CASBはリアルタイムでクラウドサービスの利用状況をモニタリングし、異常な動作や非公式のクラウドサービスの利用を即座に検知します。

データ保護ポリシーの適用: CASBを使用すると、特定の情報が非公式のクラウドサービスにアップロードされるのを防ぐためのポリシーを設定することができます。

CASBは、社員がアクセスするクラウドサービスの種類やその利用状況をリアルタイムでモニタリングします。これにより、公式には承認されていないクラウドサービスへのアクセスやデータのアップロードを検知することができます。

3. 社員の意識調査

IT部門だけでの監視では、シャドーITの全容を掴むのは難しいことがあります。そのため、直接社員の声を聞くことも非常に重要です。

具体的な方法

定期的な教育: シャドーITのリスクに関する教育を定期的に行い、社員の意識を高める。

フィードバックの収集: 社員からのフィードバックを収集し、公式のITツールに対する不満点や要望を把握する。これにより、シャドーITの使用を減らすための改善策を立てることができます。

定期的にアンケートやインタビューを実施し、社員が日常業務で利用しているITツールやサービスについて調査します。この情報をもとに、公式のツール以外で何が利用されているのか、なぜそのツールを利用することになったのかなどの背景を理解することができます。

これらの方法を組み合わせることで、シャドーITの検知の正確性を高めることができます。検知した上で、適切な対策を講じることが重要です。

シャドーITを根絶するための実践的アプローチとは?

組織内でのシャドーITは、セキュリティリスクやデータの不整合をもたらす可能性が大いにあり危険な行為です。以下、シャドーITを根絶するためのアプローチをより具体的に解説します。

1. ITポリシーの策定

シャドーITの使用を抑制するための最も基本的な方法は、明確なガイドラインとポリシーを策定することです。

ポリシーの明文化
組織内で許可されるITツールと、禁止されるツールを明確にリストアップします。このリストは定期的に更新が必要です。

ポリシーの周知
ポリシーの存在自体を全従業員に知らせるため、定期的なメールや会議、掲示板などを利用します。

2. 既存のIT環境の改善

シャドーITが求められる背景には、公式のシステムの使いにくさや機能の不足があることが多いです。

フィードバックの収集
社員からのフィードバックを収集し、システムの改善点や要望を把握します。

UI/UX(製品やサービスを使うときの操作画面や使った感じ)の最適化
使用されるシステムのユーザーインターフェースやユーザーエクスペリエンスを改善することで、社員の満足度を高めます。

3.教育とトレーニング

シャドーITのリスクを理解してもらうためには、教育とトレーニングが不可欠です。

定期的な研修
シャドーITのリスクや、公式のシステムの利用方法に関する研修を定期的に行います。

事例ベースの教育
実際に発生したシャドーIT関連の事故やトラブルを事例として取り上げ、具体的なリスクを学ぶ機会を提供します。

質問・相談の窓口設置
ITに関する疑問や不明点を気軽に相談できる窓口を設置し、正しいIT利用の意識を根付かせるサポートを行います。

これらのアプローチを組み合わせることで、組織内でのシャドーITの使用を大幅に減少させることが期待できます。

シャドーITの撲滅に役立つおすすめのツール5選

シャドーITを撲滅させ、組織のIT環境を安全かつ効果的に運用するためには、公式に推奨されるツールの導入が不可欠です。ここでは、シャドーITを撲滅し、効果的な運用をサポートするおすすめのツールを5つご紹介します。これらのツールは、セキュリティや利便性を重視したものばかりです。組織のニーズに合わせて最適なツールを選択し、安全なコミュニケーション環境を築きましょう。

⒈Cisco CloudLock

CloudLock は、クラウド上でのユーザーの動きを監視し、異常な動きや不正アクセスを検知します。ビジネスチャットにも対応しており、 Slack, Microsoft Teams, LINE WORKS などの主要なビジネスチャットツールとの連携が可能となっています。

https://www.cisco.com/c/ja_jp/products/security/cloudlock/index.html

⒉Symantec CloudSOC

CloudSOC は、クラウドアプリケーションのセキュリティリスクを評価し、シャドーITのリスクを検知・分析します。ビジネスチャットに対応しており、 LINE WORKS, Chatwork, Tocaro などのビジネスチャットツールとの連携が可能となっています。

⒊LINE WORKS

LINE WORKSは、ワークスモバイルジャパン株式会社が提供するビジネスコミュニケーションプラットフォームです。プライベートで使われるLINEと同様の操作感を持つため、利用者にとっての学習コストが低いとされています。

使いやすさ: LINEと似たインターフェースで、すぐに使い始められる。

統合されたツール: カレンダーやアドレス帳など、ビジネスに必要な機能が統合されている。

セキュリティ: 企業向けに強化されたセキュリティ機能を搭載。

https://line.worksmobile.com/jp/

⒋Chatwork

Chatworkは、Chatwork株式会社が提供するチャットを中心としたビジネスコミュニケーションをサポートするクラウド型サービスです。多くの企業や組織で導入されており、グローバルに展開されています。

タスク管理: チャット上でタスクのアサインや期限設定が可能。

ファイル共有: ドキュメントや画像などを安全に共有できる。

グループ作成: プロジェクトや部署ごとにグループを作成してコミュニケーションを取ることができる。

https://go.chatwork.com/ja/

⒌Tocaro

Tocaroは、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社が提供する日本発のビジネスチャットツールで、特にセキュリティ面での強化が注目されています。中小企業から大企業まで、幅広く導入されています。

セキュリティ: 高度な暗号化技術を利用し、データの安全性を確保。

カスタマイズ性: 独自のAPIを提供し、他の業務システムとの連携が可能。

多機能: タスク管理、カレンダー、ファイル共有など、多くの機能が統合されている。

https://tocaro.im/

シャドーITに対する社内の意識を高めていきましょう

シャドーITは、リモートワークが当たり前になった労働環境の中で、見過ごせないリスク要因になってきました。しかし、そのリスクを理解し、適切な対策を打つことで、企業の情報環境はより安全で効率的になります。企業は、この問題への積極的な取り組みが、経営の成功を左右する鍵となるでしょう。

シャドーITに対する意識と戦略を高め、企業の未来を守り抜きましょう。今こそ、社内でしっかりとシャドーITの危険性を伝え、一丸となってこれに立ち向かう時です。組織の未来と成長のために、持続的な対策と教育の推進が求められています。

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