時代の変化と共に、企業の社内コミュニケーションスタイルも進化を遂げています。コロナ禍で加速したテレワークによって、リモートワークでもチームワークを維持・向上させる新しいアプローチが生まれています。
この記事では、実際の企業がどのように社内コミュニケーションのイベントを戦略的に展開し、成果を上げているのかに焦点を当て、その事例を深掘りします。
イベントは単なる集まりではありません。適切に実施されたイベントは、組織内の絆を強化し、新しいアイデアやコラボレーションを生み出します。先進企業がどのようにイベントを通じて社内コミュニケーションを充実させ、ユニークな取り組みで社員のエンゲージメントを高めているかを探ります。具体的な事例を通して、その実現手法とその裏にある戦略を明らかにしましょう。
社内コミュニケーションの新しい枠組みとは?
過去の手法に囚われず、新しい時代に合ったコミュニケーションの形を模索する企業が増加中です。特にリモートワークの普及により、従来のオフィスでの社内コミュニケーションとは一線を画したアプローチが要求されるようになりました。ここでは、どのようなポイントが重要視され、どのような成果が生まれているのかを解説します。
⒈リモートコミュニケーションの質
リモートワーク環境下では、対面でのコミュニケーションが難しくなり、その質に課題が生じがちです。例えば、ZoomやTeamsなどのオンライン会議ツールを使用する際、参加者が複数人いると意見がなかなか出しにくくなる経験をしたことがある人が多いのではないでしょうか。
そこで1つの事例として、米Googleは「Dory」というツールを開発しました。これは会議のアジェンダに対して社員が事前に質問を投稿し、どの質問に時間を割くかを投票できるもので、全ての声が拾われやすくなっています。
⒉ツールとプラットフォームの選定
オンラインコミュニケーションをスムーズに進めるには、チーム内での情報共有や社内コミュニケーションをサポートするツールが不可欠です。
ビジネスチャットのSlackを活用し、テーマごとのチャンネルを設けることで、情報を整理し、必要なメンバー同士が効率よくコミュニケーションをとることができるようになった事例は多くあります。ここでは、ツールがもたらす便利さと、その利用におけるルール作りが重要となります。
⒊企画・実施の透明性と参加のしやすさ
イベントやミーティングの企画・実施においては、透明性を持たせ、参加しやすい環境を作ることが重要です。
例えば、米Facebookでは、企画段階から従業員を巻き込み、オンラインでアイデアを募り、それをもとにイベントを作り上げています。このプロセスを通じて、従業員同士のコミュニケーションが活発化し、企画への参加意欲も高まります。さらに、オンラインでのイベントは、場所にとらわれることなく参加可能であるため、手軽に様々なイベントに参画できるメリットも享受できます。
イベント戦略で新しい社内コミュニケーションを取り入れた事例
組織内の情報のやりとりや人々のつながりを強化するコミュニケーションは、企業が抱える課題や可能性を拓く重要な鍵となります。特に、新常態となったリモートワーク環境では、このコミュニケーションが中心的な役割を果たします。企業が社内コミュニケーションを効果的に再概念化する一つの手段として、イベント戦略が頭角を現しています。
こちらでは、いくつかの企業がどのように革新的なイベントを通じて社内コミュニケーションの質を向上させ、新しい働き方をサポートしているのかを、具体的な事例をもとに探っていきます。イベントがどのように社内コミュニケーションを変え、企業文化や業績にどのような影響をもたらしているのか、その要因と課題を明らかにしていきましょう。
ネット上の仮想空間「メタバース」を使った社内交流会:武田薬品
武田薬品はインターネット上の仮想空間「メタバース」を使った社内交流会「クロスイノベーションカフェ」を組織横断的に開催しました。このイベントでは、経営陣よるスピーチを皮切りに、タケダのトリビアに関する〇×クイズや、28のトークルームを用意して経営陣も参加する自由な交流会を行いました。参加者は所属部署と名前だけを共有しアバターとして交流し、互いのバックグラウンドを意識しないカジュアルでフランクなコミュニケーションを実現しました。
目的:オンライン会議にはない、バーチャルでありながらもリアルに近い状況での有機的なコミュニケーションが可能となるので社員に一層タケダのことを好きになってもらい、モチベーションを高く持って仕事をしてもらうこと。
成果:参加者からは「対面での交流が実現していなかった同期とメタバース上で出会えた」「所属や階級を気にせずカジュアルに交流できてよかった」「ITリテラシーが高まった」という声が挙がり、アバターという分身を介すことでオンライン会議にはないリアルで臨場感のあるコミュニケーションが生まれたそうです。
https://www.240.takeda.com/article/01/
参加ハードルの低いオンラインクイズ大会を開催:リコージャパン株式会社
コロナ禍でテレワークになり、仕事のコミュニケーションは増えましたが、
増えたのはあくまで業務的なコミュニケーションであり、業務プラスαのコミュニケーションは激減し、その状況を打破するために、「バヅクリ」を導入しオンラインのクイズ大会を開催しました。ヨコとの会話の中で、内に籠っているストレスを発散してもらうことが第一でした。
目的:業務プラスαのコミュニケーション機会が激減し、テレワークで内に篭りストレスが発散しづらい状況に変化を与えたい
成果:参加者は、「思っていたより楽しかった」「良いストレス発散になった」という声があがっています。部署間のコミュニケーション機会を提供出来たそうです。
TGIF(Thank God It’s Friday)ミーティング:Google
Googleは、「TGIF(Thank God It’s Friday)」と呼ばれる全社員が集まる会議を定期的に実施しています。このミーティングでは、企業の最新ニュース、プロダクトアップデート、さまざまな情報が共有され、社員は経営陣に対して質問を行うことができます。社員を映像でつないでライブでミーティングを行い、全世界の全社員6万人が対象になっており、社員なら誰でも参加できることが可能です。そして、創業者や本社の経営トップ自らが直接、社員に語りかけることもあります。
目的:会社の進捗や情報をすべての社員と共有することで、透明性を高め、社員の関与とコミットメントを深める。
成果:TGIFは、社員が会社のミッションやビジョンにより強く結びつく手段となっており、社内コミュニケーションの活性化、経営陣と社員との距離の縮小を果たしています。
ハッカソン:日本マイクロソフト株式会社
マイクロソフトでは年に一度、全社員を対象としたハッカソンイベントを開催しています。ハッカソンとは、主にソフトウェア開発におけるエンジニアやデザイナー、プログラマーなどが集まり、一定期間集中的にアプリケーションやシステムなどを開発するイベントのことです。このイベントでは、社員が自由にチームを作り、自らが実現したいプロジェクトに取り組むことができます。
目的:新しいアイデアの発表、異なる部署やポジションの人々とのコラボレーションを促すことで、社内のコミュニケーションを活性化させる。
成果:多くの革新的なプロジェクトやアイデアが生まれ、実際の製品やサービスへと発展しています。社員は新しいスキルを学び、異なる部署の同僚と協力することで、多角的な視点からプロジェクトを進めることができます。
https://learn.microsoft.com/ja-jp/power-platform/guidance/adoption/hackathons
ShipIt Day:アトラシアン
アトラシアンでは、四半期に一度「ShipIt Day」を開催しています。社員は24時間で自分のアイデアを「出荷」(実現)する形のイベントです。
目的:クリエイティビティを促し、通常の業務から一時的に解放され、新しいアイデアやプロジェクトにフォーカスできる時間を提供する。
成果:新しいアイデアのプロトタイプが生まれ、実際の製品開発やプロジェクトに展開されるケースもあります。社員同士のコラボレーションとコミュニケーションが活発になり、普段接することのないメンバーとも協働する機会が生まれます。
https://www.atlassian.com/ja/company/shipit
これらの事例は、異なるアプローチをとりながらも、社内コミュニケーションを高め、従業員のエンゲージメントを向上させる共通の目的を持っています。企業にとって、社員が情報を共有し、協力し、相互にサポートする文化を築くことは、持続可能な成長とイノベーションに不可欠です。
効果的な社内コミュニケーションとイベントの展開方法とは?
これらの事例から学び取るべきポイントとその実装を深掘りしましょう。具体的な実装ステップも含めて、成長への道のりを探ります。
適切なプラットフォームの選定と利用
企業内のコミュニケーションやイベントの成功は、選定されたプラットフォームやツールに大きく依存します。
実装方法
⒈ニーズの確認: まず、何を達成したいのか、どのような機能が必要なのかを明確にします。
⒉オプションのリサーチ: 可能なプラットフォームやツールをリサーチし、比較します。
⒊トライアル: 選定した数個のツールで小規模なテストを行い、フィードバックを集めます。
⒋フィードバックに基づく調整: トライアルの結果をもとに最終的なプラットフォームを選定し導入します。
イベント企画時のコミュニケーションの確立
イベントの成功は、企画段階でのクリアで透明なコミュニケーションに強く依存しています。
実装方法
⒈明確な目標設定: イベントの目標と期待値をハッキリとさせ、関係者全員で共有します。
⒉ロールと責任: それぞれのチームメンバーのロールと責任を明確化し、全員が理解していることを確認します。
⒊定期的なミーティング: プロジェクトの進捗を確認し、必要な調整を行う定期ミーティングをセットアップします。
⒋オープンなコミュニケーションチャネル: 随時コミュニケーションをとれるオープンなチャネルを設定します。
フィードバックの収集とフィードバックループの確立
フィードバックは改善の源です。継続的なフィードバックはイベントを次のレベルへと引き上げます。
実装方法
⒈フィードバックのメカニズム: イベント後、参加者や関係者からフィードバックを簡単に収集できるメカニズムを作ります。
⒉データの分析: 収集したフィードバックを分析し、具体的なアクションアイテムを抽出します。
⒊フィードバックループ: アクションアイテムをもとに改善を行い、次回のイベントで実施することを確認します。
⒋改善の共有: 改善ポイントや新しい取り組みを関係者と共有し、次回への期待を構築します。
社内コミュニケーションの次のステージ とは?
社内コミュニケーションは絶えず進化しており、そのダイナミズムは業界や企業の境界を超えています。未来を見据えた戦略的なコミュニケーションが今、求められています。こちらでは、社内コミュニケーションの次のステージをご紹介します。ぜひ参考にしてみて下さい。
予測1)よりリアルタイムなコミュニケーション
リアルタイムの価値
リアルタイムコミュニケーションは、即時のフィードバックと動的なコラボレーションを可能にします。これにより、プロジェクトのアジリティが高まり、迅速な意思決定が可能となります。
テクノロジーの進化
5Gテクノロジーの導入やAIの進化により、リアルタイムコミュニケーションツールも新たな局面を迎えています。これらのテクノロジーは、ビデオコンファレンス、チャットツール、コラボレーションプラットフォームにおいて、更なる即時性と高品質なやりとりを実現します。
予測2)より多様なフォーマットとプラットフォーム
オムニチャネル(様々な方法での繋がり)の利用
オムニチャネルコミュニケーションは、社員が複数のプラットフォームやメディアを通じて一貫したコミュニケーションを体験できるようにする概念です。これにより、社員が選好するプラットフォームを選んでコミュニケーションを行える柔軟性が増します。
カスタムコンテンツ
異なるプラットフォームやデバイスで最適化されたコンテンツを提供することで、ユーザーエンゲージメントと情報伝達の質を高めることができます。
予測3)コミュニケーションとワークスタイルの融合
ワークフローとの一体化
コミュニケーションツールは、ワークフローと密接に結びつき、業務の一部としてスムーズに機能します。たとえば、CRMツールやプロジェクト管理ソフトウェアと連携し、コミュニケーションとタスクの管理を同時に行えるシステムが一般的になります。
効果的なリモートワーク
テクノロジーの進歩により、場所にとらわれず、任意の場所で効果的なコミュニケーションとコラボレーションが可能となります。これにより、リモートワークの質が向上し、多様なワークスタイルを実現します。
以上の要素を含め、未来のコミュニケーションは更なるポテンシャルを解き放つことができるでしょう。これらの予測は、今後のコミュニケーション戦略策定の参考にしていただければ幸いです。
社内コミュニケーションの新時代へ
コロナ禍がもたらした変化は数多く、私たちの働き方、考え方、そしてコミュニケーションの取り方も大きく変わりました。変化というものは、不確実性や不安をもたらす一方で、新しい可能性やチャンスを生む土壌にもなります。
企業の役割は、この変化を受け入れ、そしてそれを最大限に活用することです。今、この瞬間から新しいコミュニケーションの形を積極的に模索し、導入してみてください。そのためのツールや方法、事例は既に多く存在しています。
新しい風を組織に吹き込むことは、ただの一時的な変化をもたらすだけではありません。それは企業文化の再構築、新しい価値観の確立、そしてより強固なチームワークを生む礎となります。
そして、この一歩を踏み出す勇気が、未来のビジネスの成長へと導く鍵となるでしょう。変革は決して容易ではありませんが、その先に待つ成果と達成感は計り知れないものです。今こそ、新しい風を吹き込む一歩を踏み出しましょう。