自治体が最優先すべきビジネスチャット選定の3つの基準とは?

自治体の皆様は、DX推進の必要性を感じつつも、「セキュリティポリシーの厳格化」「庁内・庁外(住民や病院など)との情報連携の遅れ」「災害時の迅速な情報共有の難しさ」といった、自治体ならではの複雑な課題に直面しているのではないでしょうか。

国の働き方改革の波を受け、メールや電話、FAXといった従来のアナログな情報伝達手段から脱却し、住民サービスの向上と職員の生産性向上を目指す上で、ビジネスチャットは不可欠なツールとなっています。しかし、秘匿性の高い個人情報を取り扱う自治体においては、ツールの選定基準が民間企業とは根本的に異なります。

この記事では、自治体やDX推進部門の皆様に向けて、ビジネスチャット導入時に最優先すべきセキュリティ基準、庁内・災害時・庁外連携それぞれの活用法を具体的に解説します。さらに、「自治体特有のニーズ」を満たすおすすめのビジネスチャットツール5選をご紹介します。この記事が安全かつスムーズなコミュニケーションインフラ構築に役立つことを願っています。

自治体がビジネスチャット導入時に直面する3大課題

民間企業とは異なる環境を持つ自治体において、ビジネスチャット導入を阻む特有の壁が存在します。

1. 厳格なセキュリティポリシーと三層分離の原則

自治体は機密情報や個人情報を扱うため、セキュリティ基準が極めて厳格です。特に、総務省のガイドラインに基づく「三層分離」の考え方(インターネット接続系、LGWAN接続系、個人番号利用事務系の分離)は、ツール選定と運用を複雑にしています。職員が使いやすい利便性を求めつつも、不正アクセスや情報漏洩のリスクを徹底的に排除できる、強固なセキュリティ機能を持つツールを選ぶ必要があります。

2. 縦割り組織と全庁的な連携の困難さ

自治体は部署間の権限が明確に分かれている「縦割り」の傾向が強く、特定の部署(例:福祉課と税務課)を横断した情報共有や、全庁的な連携がメールを介することで滞りがちです。日常業務における意思決定スピードの遅延に加え、特に災害発生時など、庁舎外の避難所や他自治体との連携において、リアルタイムの情報共有ができないことは重大なリスクとなります。

3. デジタルリテラシーの多様性と定着の難しさ

自治体職員の年齢層や職種は多岐にわたり、デジタルツールへの習熟度には大きな差があります。複雑なインターフェースや多機能すぎるツールを選んでしまうと、一部の職員しか使わず、結局メールや電話に戻ってしまう「二の舞い」に陥りがちです。全庁的に利用を定着させるためには、「誰でも使える」シンプルな操作性と、徹底した利用ルールの整備が不可欠です。

自治体特有のニーズを解決するビジネスチャットの活用術

ビジネスチャットの真価は、日常業務の効率化だけでなく、自治体業務の根幹である「住民サービス」と「危機管理」の向上にあります。

1. 【庁内連携】会議時間の削減とペーパーレス化

  • 活用法: 課内・部内での「日々の情報共有」や「簡単な決裁前の確認」はチャットで完結させ、会議の目的を「重要な意思決定」のみに絞ります。資料をチャットのファイル共有機能で事前に配布し、印刷を前提としないペーパーレスな運用を徹底します。
  • 効果: 会議のための準備時間と開催時間を大幅に削減し、職員がコア業務に集中できる時間が増加します。

2. 【危機管理】災害発生時の情報集約と安否確認

  • 活用法: 災害対策本部と避難所、外部機関との間で専用のチャネルを事前に作成しておきます。発災時は、安否確認機能を活用して職員の状況を即座に把握し、被害状況や避難所運営に必要な情報をリアルタイムでチャットに集約します。
  • 効果: 電話回線が輻輳(ふくそう)する状況下でも確実に情報伝達が可能となり、被災状況の初期対応スピードが劇的に向上し、住民の安全確保に直結します。

3. 【庁外連携】住民や外部医療機関との安全な連携

  • 活用法: 住民からの問い合わせ対応、地域の病院や学校との連携など、庁外との連絡には、セキュリティレベルが担保された「外部連携機能」や「専用ゲストアカウント」を利用します。個人用SNSの利用は厳禁とし、セキュリティが確保された環境で、スムーズな情報交換を可能にします。
  • 効果: 迅速な情報提供や連携により、住民サービスの満足度が向上します。また、個人情報の取り扱いに関するコンプライアンスリスクも回避できます。

自治体が最優先すべきビジネスチャット選定の3つの基準

自治体の情報システム担当者がツールを選定する際、特に以下の 3点を最優先で評価する必要があります。

基準1:国のセキュリティガイドラインへの適合性

  • クラウドセキュリティ: サービスが「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)」や自治体情報セキュリティクラウドの要件を満たしているかを確認します。データの保管場所(国内か海外か)や、通信経路の暗号化(SSL/TLS)、二段階認証などの基本機能は必須です。
  • アクセス管理: 職層や利用部署によってアクセスできるチャネルやファイルを厳格に制限できる「柔軟なアクセス権限設定」が不可欠です。

基準2:使いやすさと全庁的な定着支援

  • UI/UX: デジタルリテラシーに依存しない、直感的でシンプルな操作画面であるか。特にスマートフォンやタブレットでの操作性が重要です。
  • 既読機能: 既読機能がグループチャットでも明確に確認できるか(誰が読んだかまでわかるか)は、情報共有の確実性を高める上で重要な要素となります。

基準3:既存のLGWAN環境との相性とサポート体制

  • LGWAN-ASP対応: LGWAN(地方公共団体を相互に接続する行政専用のネットワーク)との接続サービス(LGWAN-ASP)として登録されているか、またはLGWAN接続系端末から安全に利用できる仕組みが用意されているかを確認します。
  • 導入・運用サポート: 複雑なセキュリティ要件や組織的なルール策定に対し、国産ベンダーによるきめ細やかなサポートを受けられるかも、導入後の円滑な定着に直結します。

自治体の課題解決に強い!おすすめビジネスチャット5選

ここでは、セキュリティ、定着率、外部連携の観点から、自治体での利用に強みを持つビジネスチャットツールを厳選してご紹介します。

1. Tocaro:国産の高いセキュリティとタスク管理で定着を図りたい組織に

純国産のTocaroは、チャット・タスク管理・ファイル共有を統合したオールインワン型のツールであり、自治体が求める高いセキュリティと情報の一元管理を両立できます。

  • 自治体導入のポイント: 日本のサーバーでデータを管理している点に加え、メッセージから即座にタスクを作成し進捗管理できる機能が、自治体特有の縦割り組織における「業務依頼の流出・漏れ」を根本から解消します。特に災害対応やプロジェクト進行時の「誰が何をいつまでにやるか」を明確化し、庁内横断的な業務の確実な実行を支援します。また、国産ベンダーによるサポート体制は、複雑なセキュリティ要件への対応や、全庁的な利用ルールの策定において強力な後ろ盾となります。

公式サイト:https://www.tocaro.im/

2. LINE WORKS:即座の全庁普及と災害時連携を重視する組織に

LINE WORKSは、コンシューマー向けLINEとほぼ同じ操作性を持つため、職員のデジタルリテラシーに関わらず、短期間で全庁的に利用を定着させることが可能です。

  • 自治体導入のポイント: 既読機能が「誰が確認したか」まで明確に把握できるため、災害時の安否確認や緊急連絡の確実性が担保されます。カレンダーや掲示板などのグループウェア機能も統合されており、庁内の情報共有基盤としても利用しやすいです。特に、操作性のシンプルさから、幅広い年齢層の職員がいる自治体での利用に適しています。

公式サイト:https://line.worksmobile.com/jp/

3. Microsoft Teams:Microsoft 365環境での業務効率化を追求する組織に

既にMicrosoft 365(Office製品)のライセンスを保有している自治体や、今後Microsoft製品を中心とした環境整備を進める組織にとって、Teamsは最も導入しやすいツールです。

  • 自治体導入のポイント: PlannerやSharePointとのシームレスな連携により、会議、文書作成、タスク管理を一つのプラットフォームで完結できます。大規模組織向けの強固なガバナンス機能や、きめ細やかなアクセス権限設定機能が標準で備わっているため、厳格なセキュリティ管理が可能です。

公式サイト:https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-teams/

4. Chatwork:庁外の協力企業・外部機関との連携を頻繁に行う組織に

Chatworkは、シンプルなUIと、外部ユーザーを招待しやすい仕組みが特徴の国産ビジネスチャットです。

  • 自治体導入のポイント: 外部IDによる連携がスムーズなため、地域の学校、病院、介護施設、外部委託業者などとのプロジェクトベースの連携チャネルを、高いセキュリティを保ちつつ迅速に構築・終了できます。煩雑になりがちな庁外連携の窓口を一元化し、コンプライアンスを維持しながら業務の効率化を図りたい場合に適しています。

公式サイト:https://go.chatwork.com/ja/

5. Slack:多様な業務アプリ連携で柔軟な運用を目指す組織に

グローバルスタンダードのSlackは、2,400以上の外部サービスとの連携が可能な高い拡張性を持ちます。特定の業務アプリやクラウドサービスを多用する部署の連携基盤として特に有効です。

  • 自治体導入のポイント: ワークフロービルダー機能を活用すれば、定型的な内部申請や報告フォームを簡単に作成・自動化でき、職員の事務作業を大幅に削減できます。また、高度なカスタム通知やリマインダー機能により、「通知疲れ」を避けながら、必要な情報を見逃さない運用体制を構築できます。ただし、導入・運用には一定のITリテラシーが必要となるため、DX推進部門などから段階的に導入するのがおすすめです。

公式サイト:https://slack.com/intl/ja-jp/

ビジネスチャットツールはセキュリティと利便性のバランスが鍵

自治体で利用するビジネスチャットの選定は、セキュリティの厳格化と、職員全員の利便性・定着をいかに両立させるかが鍵となります。

最優先すべきは、LGWAN環境への対応やISMAPなどのセキュリティ基準への適合性です。その上で、縦割り組織の課題を解決する「タスク管理機能」(Tocaro、Teamsなど)や、全庁的な定着を後押しする「シンプルな操作性」(LINE WORKS、Chatworkなど)を持つツールを評価することが重要です。

この記事でご紹介した 3つの選定基準と 5つのおすすめツールを参考に、貴組織のコミュニケーションインフラを強化し、住民サービスの向上と職員の働き方改革を同時に実現されることを願っています。

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