サステナビリティトランスフォーメーション(SX)はなぜ必要なのか

「Sustainability:サステナビリティ」という言葉を最近よく耳にしませんか?サステナビリティとは、経済成長を実現させつつ、環境や社会価値を向上させる「持続可能性」のことです。深刻になりつつある環境問題を考慮して、経済成長と環境を両立させる「サステナビリティ」も企業が取り組むことがトレンドになりつつあります。

コロナ禍を経験し、世界中で様々な社会・経済的な問題が浮き彫りになりました。多くの企業が深刻なダメージを受けてしまい、企業戦略の見直しを迫られています。

今後もコロナ禍のように、社会経済に大きなインパクトを与える脅威の出現もあるかもしれません。そのため、企業は持続可能性を重視した経営への転換が求められるようになってきています。つまり、「サステナビリティトランスフォーメーション(SX)」の実現と推進が必要になってきているのです。

では、具体的に「サステナビリティトランスフォーメーション(SX)」とはどのようなものでしょうか?

この記事では、誰でもすぐに理解出来るサステナビリティトランスフォーメーション(SX)について徹底解説します。

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)とは?

経済産業省 経済産業政策局の『伊藤レポート3.0』(2022年8月)によると、

社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを「同期化」させていくこと、及びそのために必要な経営・事業変革(トランスフォー メーション)を指す。

社会のサステナビリティと企業のサステナビリティの同期化とは、企業が社会の持続可能性に資する 長期的な価値提供を行うことを通じて、社会の持続可能性の向上を図るとともに、自社の長期的かつ 持続的に成長原資を生み出す力(稼ぐ力)の向上と更なる価値創出へとつなげていくことを意味する。

とあります。

勘違いしがちなのは、社会課題の解決に貢献する面のみを課題としてしまうことです。サステナビリティトランスフォーメーション(SX)とは、経済成長が重要となってきます。事業基盤である環境・社会を維持しながら、どちらにも貢献する経営へ移行することなのです。

企業が長期的に成長するには、「稼ぐ力」と「ESG(環境・社会・企業統治)」の両立を目指す経営と、投資家との対話の仕方を変える必要があります。

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)はなぜ必要なのか?

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)は、地球上の資源や環境を長期的に保全し、人間と自然が共生しつつ経済成長もする、根本的な変革を実現するために必要です。では、その必要性について具体的に4つ説明します。

⒈地球環境の保全のため

人類が享受する全ての資源は、地球上の自然環境から生み出されます。しかし、現在のビジネスモデルや社会システムは、その資源を無制限に使い続けることで地球環境に負荷をかけています。地球温暖化や気候変動など、目に見える形で現れるようになってきています。そこで、サステナビリティトランスフォーメーション(SX)を進めることで、資源の効率的な使用やCO2の排出削減など、地球環境を保全し、人類が持続可能な社会を築くことができます。

⒉社会の持続可能性を高めるため

現代社会は、人口増加や社会問題の複雑化など、さまざまな課題に直面しています。サステナビリティトランスフォーメーション(SX)によって、資源の効率的な使用やCO2の排出削減など、社会の持続可能性を高めることができます。

⒊経済成長の促進のため

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)によって、企業や産業がより持続可能な方向に変革されることで、将来的な経済成長が促進されることが期待されています。

⒋国際社会の課題解決のため

最近良く目にするSDGsにも関わっています。サステナビリティトランスフォーメーション(SX)は、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成にも必要不可欠です。国際社会が抱える様々な課題を解決するために、SDGsの目標に向けた取り組みを進めて、世界的な課題の解決に貢献することができます。

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)のメリットとは?

企業がサステナビリティトランスフォーメーション(SX)を進める中で、どのようなメリットがあるのでしょうか?代表的な2つのメリットをご紹介します。

企業のイメージが向上する

世界の金融市場に大きな影響を与える激しい気候変動や資源の枯渇・災害リスクによって、投資家によるESG投資(環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う投資のこと)市場が拡大しています。自社の利益だけを追求している企業よりも、よりよい社会を目指して積極的に貢献活動に取り組んでいる企業のほうが、企業としてのブランディング強化に繋がり、イメージが向上します。

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)を通じて企業と社会の持続可能性を実現している企業は、ESG投資(環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う投資のこと)の評価にも繋がり、投資される可能性が上がるというメリットがあります。

株主から注目されるようになる

2020年12月の財務省「ESG投資について」というレポートにて、ESGを重視した投資方法である「ESG投資」(環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う投資のこと)の市場規模が世界的に拡大していることを公表しました。

今までは短期的かつ財務的な情報のみで判断するのが主流だったのが、環境や社会、ガバナンス(健全な企業経営を目指す企業自身による管理)などの非財務情報をもとに、中長期的な視点で企業の成長を見極める動きが活発化し始めています。

積極的にサステナビリティトランスフォーメーション(SX)を推進している企業は、おのずと投資家や株主からの評価が高くなることが期待できるでしょう。その結果、企業にとって資金を集めやすくなり、キャッシュフローが改善され、将来にわたって経営を強化することが可能です。

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)を実現する3つの取組みとは?

では、企業でサステナビリティトランスフォーメーション(SX)を実現するためにはどのようにすればいいのでしょうか?経済産業省 経済産業政策局の『伊藤レポート3.0』(2022年8月)では、3つの取り組みが必要としています。

⒈社会のサステナビリティを踏まえた目指す姿の明確化

まずは、社会のサステナビリティも踏まえつつ、自社が長期的に目指す姿を明確化することが重要になります。

社会的課題の解決と企業価値の向上を両立するビジネスモデルを構築するには、長期スパンで改良に取り組み、事業として展開することが必要となります。自社の事業活動を通じて解決する重要課題を特定することが求められるのです。その上で、自社の価値観や重要課題が一致し、どのように社会に価値を提供していくのか、それによってどのように長期的な価値向上を達成するかという、自社独自の価値創造ストーリーをイメージすることが必要になります。

⒉目指す姿に基づく長期価値創造を実現するための戦略の構築

企業には目指す姿に基づき、下記の内容が求められます。
・具体的にどのように価値創造を実現していくか
・企業全体の長期価値創造の在り方を示す長期戦略を構築する
・その具体化に向けた短・中・長期別の戦略を組み立て

要するに、どのようなビジネスモデルを通じて社会的課題の解決を目指し、どのように企業価値の向上に結び付けるのかについて長期的な戦略を構築することが必要となってくるのです。そのためには、投資家や取引先などと長期目線の対話を行うことや自社のビジネスに影響を及ぼす可能性のある環境変化などのリスクを想定することも有益です。

⒊長期価値創造を実効的に推進するための KPI・ガバナンスと、実質的な対話を通じた更なる磨き上げ

長期的に持続的な企業価値向上を実現するためには、KPI の設定(企業や組織の目標を達成するために行う日々の活動の具体的な行動指標)とガバナンス体制(健全な企業経営を目指す企業自身による管理体制) の整備が有効だと言われています。企業は、目指す姿とそれに基づく戦略を着実に構築し実行するとともに、外部環境の変化等に応じて適切な見直しを図ることが求められるのです。

日本のサステナビリティトランスフォーメーション(SX)への取組みの現状とは?

日本企業のサステナビリティトランスフォーメーション(SX)への取り組みはまだまだ広がってはいません。2021年の日本企業のROE(自己資本利益率)は、依然として欧米企業と差が開いてしまっています。

これまでの短期的な利益を獲得することに重点が置かれていた事業活動からサステナビリティトランスフォーメーション(SX)に対応した事業活動へ転換する」ことが必要となってきているのです。しかし、具体的にどのように取り組めば良いか、また事業活動との合理性やサステナビリティを織り込むことなどの見出すのが難しくなっています。

また、投資家は中長期的な企業価値向上の実現に必要な条件として、「企業の稼ぐ力」と「持続可能性」を挙げ、企業の研究開発、人的能力開発、ITなどの「無形資産への投資」に注目しています。米国企業の研究開発費の伸びは営業利益の伸びを上回っているのに対して日本では大きく下回っているのが現状です。これは将来の利益に対しての消極的な姿勢とみられ、中長期的な収益性を重要視する投資家にとって厳しい評価に繋がってしまうのです。

経済産業省 経済産業政策局の『伊藤レポート3.0』(2022年8月)による質の高い対話が行えている企業もあるが、投資家との対話に消極的な企業、または意欲はあるが有効な手法が見つかっていない企業もまだ多くあり、今後の成長が期待されています。

どのようにサステナビリティトランスフォーメーション(SX)を自社に取り入れるのかを考えよう

コロナ禍以降の社会の急激な変化に合わせてサステナビリティトランスフォーメーション(SX)も重視されるようになっています。

今までの大量生産・大量消費時代は、消費者が重要視していたのは「より安くて良いものを手にすること」でした。しかし、今の消費者はモノや価格だけにこだわらず、「どのような思いで作られているのか」「どのような環境で作られているのか」といったものつくりのストーリーにまでこだわるようになってきています。

サステナビリティトランスフォーメーション(SX)に取り組むことで、投資家たちから注目されたり、ブランディング強化に貢献したりできるメリットがあります。

国内事例は少ないですが、これからの世界情勢においてどの企業も避けては通れない通過点となることでしょう。日本は5年ほど遅れていると言われています。少し先をいく海外の事例から学びながら、どのように自社に取り入れられるのかを検討してみましょう。

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