ロジカルシンキングを使った目標設定の仕方

「目標を立て、達成する」という行為は、仕事・プライベートを問わず、「理想とする自分像」に近づくためには欠かせません。しかし、重要性を認識する一方で、一連の行為に苦手意識を感じてしまう人も多いことでしょう。

事実、新年の目標を達成できる確率に関するいくつかの実験の結果を参照すると、成功率は10%前後に留まっています。

目標を達成できないことの原因のひとつとしては、そもそもの目標設定に難があることが挙げられます。

そこで今回は、ロジカルシンキングを利用して失敗のない目標設定をする方法のついて説明します。

ロジカルシンキングを使った目標設定の基本といえば【SMARTの法則】

ロジカルシンキングを使った目標設定のフレームワークとして有名なものが、SMARTの法則です。SMARTの法則は、1981年にジョージ・T・ドラン氏によって提唱されて以来、解釈の形を変えながら現在まで引き継がれてきました。

ここでは、現在主流となっている解釈を中心に抑えていきます。

SMARTの原則のS, M, A, R, Tはそれぞれ「Specific:目標が具体的かどうか」「Measurable:目標が測定可能かどうか」「Achievable:目標が達成可能かどうか」「Relevant:目標が適切かどうか」「Time-bound:目標に期限があるか」といった視点を指します。各々について確認しましょう。

1.Specific:目標が具体的かどうか

目標が漠然としたものだと、何のためにどのくらいの努力が必要となってくるかが分からず、計画を立てられません。

目標が具体的であれば、目標から逆算して何をすべきかを明確に把握できるようになります。

例えば「自社商品をヒットさせる」という目標は、なにを以てヒットしたとみなすのかが曖昧です。「商品Aを1ヶ月で10万個売る」といった目標設定にすることで、目指すべきゴールがはっきりと見えてきます。

2.Measurable:目標が測定可能かどうか

測定可能な目標というのはつまり、達成度を定量的に捉えることができるということです。

そうすることで、自分が今目標達成への道のりのなかで、どのあたりに位置しているかを把握することができます。達成できなければ意味がない、と捉えられがちな努力の過程において、「着実に目標達成に近づいている」という自信を持つことができれば、モチベーションの維持にもつながります。

先程の「商品Aを1ヶ月で10万個売る」という例であれば、実際に売り上げた商品の数がそのまま目標の達成度を表すため、この条件を満たしていると言えます。

3.Achievable:目標が達成可能かどうか

あまりにも現実的でない目標は、達成できずただの願望で終わってしまいます。まずは現状を把握し、無理のない目標を立てることです。現状で行っていることに加えて、少し努力すれば達成できるくらいの目標を設定するようにしましょう。

4.Relevant:目標が適切かどうか

Relevantという語は「関連した」という意味もあり、ここで言う「目標が適切」というのは、「目標が自身の利益と関連性がある」と言い換えられます。

例)「商品Aを10万個売る」ことが「インセンティブがもらえる」ことに繋がるならば自身の利益とも合致すると言えます。

5.Time-bound:目標に期限があるか

いつまでに達成する、という期限を定めましょう。ここで注意すべきは、なんとなくの感覚で期限を設けないことです。目標設定の段階で時間の確保ができていなければ、努力するまでもなくその目標の達成は失敗に終わってしまいます。

Specific(目標が具体的か)やAchievable(目標が達成可能か)の視点とも関連しますが、やるべきことをまず小さなタスクに分け、各々のタスクにどのくらいの時間が必要かを検討するようにしましょう。

SMARTだけでは不完全?新たなロジカルシンキングの枠組み【FASTの法則】

近年、SMARTの法則に取って代わる新たなロジカルシンキングのフレームワークとして、Donald Sull氏とCharles Sull氏によってFASTの法則が提唱されました。

FASTの法則のF, A, S, Tはそれぞれ、「Frequent:目標が頻繁に議論される」「Ambitious:(不可能でない範囲で)野心的な目標であるか」「Specific:目標が具体的であるか」「Transparent:目標が組織の全員から見えるような透明性を保つ」を指します。

1.SMARTとFASTの根本的な違いは?

大きな違いは、実現可能性を重視するか否かです。SMARTの法則のAchievable(目標が達成可能であるか)とは対照的に、FAST法則のAはAmbitious(野心的な目標であるか、ただし不可能ではない範囲で)となっています。

両Sull氏曰く、「現実味を重視した安全策をとることは、ときに逆効果になる。野心的な目標を追いかけている従業員は、それほど難しくない目標を掲げている同僚たちに比べて、はるかに優れたパフォーマンスを発揮する」とのこと。

そういった野心的な目標を夢物語で終わらせないための要素が、FrequentとTransparentになってくるわけです。

「Frequent:目標が頻繁に議論される」というのは、なにも組織的な目標に限った話ではありません。個人の目標であれば、自省という形で振り返りが可能です。頻繁に目標に立ち返ることで、目標達成までのひとつひとつの意思決定に反映できるようになり、徒労を防ぐことができるでしょう。

「Transparent:目標が組織の全員から見えるような透明性を保つ」に関しては、客観的な視点を欠かさないということがポイントです。組織的な目標であれば、同僚や仲間の賛同を得られることです。個人の目標であれば、家族や友人からの賛同でも良いですし、自身で客観的な視点を持つことを意識するでも良いでしょう。

2.では、FASTの法則はどんな人に有効?

野心的な目標を立てることからスタートするFASTの法則では、目標を100%達成することは必ずしも求められていません。「100%の途中の80%、60%、いや仮に30%だとしても、元の状況から少しでも改善されたなら良いじゃない」というマインドです。故に、現状から少しでも前進したいと思っている方に向いているかもしれません。

またFASTの法則はSMARTの法則に比べ、目標を設定する地点にとどまることなく、実行段階まで視野に入れています。故に、目標を設定したは良いがうまく実行につながらない、という方に適していると言えるでしょう。

まとめ〜具体性の重要性〜

SMARTの法則、FASTの法則と紹介してきましたが、これらの法則はいわば、目標設定においてロジカルシンキングを放棄しないための指標に過ぎません。目標の性質によっては、全ての条件を達成することは不可能でしょう。

しかし、両法則にSpecific(目標が具体的であるか)が共通して含まれることからも明白であるように、目標を明確に具体的に設定することは必須項目であるように思われます。これまで目標設定や目標達成に挫折したことのある方はまず、目標に具体性を持たせることを確実にするところから始めてみてはいかがでしょう。

目標を論理的に、着実に達成するためにSMARTの法則、FASTの法則をぜひ活用してみてください。

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